部屋でアプリをしたまま寝落ちしたはずなのに、なぜか私は今外にいる。

かぐや

うーん・・。
だめだ・・・。
何度思い出そうとしても四季のハピエン見たことしか思い出せない・・・。

目が覚めた橋の下で何度も記憶を辿ってみるが、やはり外に出た記憶がない。

かぐや

ここにいても仕方がない!
まずは人がいるとこまで行ってみよう!

凛として咲く花の如く

私はまず橋の下から移動することにした。

どれくらい歩いたのかわからない・・・。

でもやっと行き交う人々やお店が見えてきた。

かぐや

どっ・・・どーゆうこと・・・!?

町人の服は私が着ているような服ではなく着物なのだ。

そう、和服。

お店の外観は昔の日本のお店みたいになっている。

立ち止まっている私を、町の人々は珍しそうな目でチラチラ見ている。

どこからか話し声が聞こえてきた。

悪人A

あの女の着ているモノはなんだ??

着物じゃないわよね・・・。何かしら?どこか異国の人なのかしらねぇ?

周りの人達が集まってきてる。

話を聞きたかったけど、今の状態だと難しいと判断した私はまずここから離れる事にした。

人目が少ない路地に一度避難しよう!

かぐや

どーゆうこと?町の人は和服だった・・・。
みんな着物だしお店の外観も私が知ってるのとは違う。
昔の京都みたいな・・・。
でもどっかで見たことがある町並みだったような・・・。

見たことがあるような町並みが少しひっかかる。

昔の日本みたいな感じに似ているからだろうか・・・?

かぐや

今いる路地裏だって見たことある気がするのよねぇ・・・。

そこで私は思い出した

かぐや

ここ恋愛アプリの【凛として咲く花の如く】にそっくりなんだ!

何回も何回もプレイしているゲーム。

間違えるはずがない。

かぐや

でもここが仮に【凛として咲く花の如く】の世界だとしたら私は今夢の中にいるってこと・・・?
だとしたら、川の冷たさや頬を叩いた時の痛みはなんだったの?

ダメだ・・・。

考えても何も解決策が見つからない。

とりあえず私は今夢を見ていて【凛として咲く花の如く】の世界に入れたってことにしておこう。

きっと一晩寝て起きたら自分の部屋のはず!

・・・それにしてもこの路地裏って確か、ヒロインが人さらいに襲われそうになって四季が助ける場所だったような・・・。

かぐや

まぁ、そんな場面に遭遇するはずないですよねー。

きゃー!!!!
やめてくださいっ!

かぐや

!!

叫ぶように助けを求める声が聞こえてきた。

私は慌てて声のする方に行く。

悪人A

お嬢さん良い着物着てるじゃねぇか。
売っぱらったら結構良い値になりそうだな・・。
身につけてる簪も綺麗な装飾してやがるな。

悪人B

なんだ?あんた結構いいとこのお嬢さんか?

ゲームのヒロインが襲われそうになっている。

かぐや

何か・・何か武器になるモノ・・。

私はキョロキョロと周りを見渡して、武器になりそうなモノを探していた。

かぐや

ないよりはマシよね・・・。

私は見つけた木の棒を握った。

やめてくださいっ!

悪人A

こんなとこじゃ誰も助けにゃこねぇよ。
残念だったな。

悪人B

あんたの着物も簪も、あんた自身も売ってやるよ。
ぺっぴんさんだから高く売れそうだしなぁ。

アプリだとここで四季が登場するはず!

悪人A

あんたを売る前にまずは俺たちに奉仕してもらうことにするか。

いや・・や、やめてください・・・。

男達は気味悪い笑みを浮かべながらヒロインの顔を撫でる。

かぐや

えっ!?登場しない!?

アプリではここで四季が登場して、ヒロインを助けて、ヒロインは四季に一目惚れする流れのはずなのに!

なんなの?ゲームのバグ!?

それとも夢の世界だから都合良くいかないってこと!?

私がそんな事考えてるうちに、男達はヒロインの着物の帯に手をかけた。

その瞬間身体が勝手に動いていた。

かぐや

何やってんだ!!!

力のかぎり男に殴りかかった

人を殴った時の鈍い音がいやに響く。

骨が折れているかもしれない。

夢のはずなのに殴った感覚が全身に広がる。

私は持っていた木の棒で男の一人を殴ってヒロインを庇うように立った。

!!

かぐや

男2人で、か弱い女の子を囲むなんて男の風上にも置けないねぇ・・・。

幸い私が殴った男は意識を失ってくれている。

悪人A

なんだ!?くそっ!テメェ!どっからでてきやがった!?

あ、あなたは??

かぐや

そんなことはあとで!
私がもう一人をどーにかするから椿ちゃんは逃げて!

椿

え?どーして私の名前・・?

かぐや

私が男に向かっていったらすぐに全力で逃げるんだ。
いいね?
私もすぐに行くから・・・。

椿

は、はいっ!

男は腰に刀を差している。

対する私は木の棒だ。

これが夢だとしたら私は刺されても死なないだろうけど・・・。

さっき人を殴った感覚や、頬を叩いた時の痛み、川の冷たさ。

全部普通に感じているところからすると、きっとこれは夢じゃないんだろう。

よくわからないけど、私はアプリの世界に来てしまっている。

そして本来ヒロインを助けるはずの四季が来ない。
これが今の私の現実だ。

かぐや

しっかりしなきゃ。
今は私がこの子を守らないと・・・。

悪人A

ぶつぶつ言ってんじゃねぇ!!!

喋るのと同時に男が刀に手をかけた。

かぐや

今だっ!!!!

椿

はいっ!!!

私は男に向かっていき、同時に椿は全力で路地裏から逃げていく。

悪人A

なめんじゃねぇぞっ!

男の方が数秒早かったのだろう。
スローモーションみたいに刀が私に振りかざされる。

かぐや

四季・・・。

あぁ、きっとこれは夢のようで夢じゃない。
私はこの男に殺される。

でも目の前で女の子が襲われてたらほっておけないじゃないか。

どーせなら四季に会ってみたかったなぁ・・・。

そう思って目を閉じた瞬間刀と刀がぶつかる乾いた音が響いた。

四季

呼んだ?

かぐや

え・・・?

四季

・・・驚いた・・・。
キミ・・・いや、今はいいか。

かぐや

???
えっと・・ほ、本物?

四季

なにそれ?俺以外にも四季って奴がいるのかな?
まぁ、まずはコイツを片付けてからキミと話すことにしようか。
少し待っててね。
・・・刺激が強いかもしれないからキミは目を閉じて耳を塞いだ方がいい。

私は何がなんだかわからないまま、四季に言われた通り目を閉じ耳を塞いだ。

人を切った音と男の断末魔が聞こえた。

耳を塞いでいても聞こえてしまった。

かぐや

四季

この男も運が無かったね、俺と出会うなんて。
・・・そして聴こえてしまったキミも。

かぐや

わ、わたし・・・。

四季

とりあえずここから離れよう。

これが私と四季の初めての出会いだった。

pagetop