ナレアちゃんて確か、向こうにいたとき弟に付きまとってたって

ぁー、一人そんな奴いたな

兄さんの話を聞いて弟はやっとナレアが誰かわかったようだ。

ほっといていいのか…?

此処が知られんのは困るし、明日にでもこっちから行くわ

たっだぁいまーぁっ!!

入り口の方から露草の声がした。
妙に静かだと思ったら今帰宅したらしい。

あれーぇ、潤ちゃんどうしーたのーぉ?ひゃはっ、俺に会いに来たーぁ!!?

弟にちょっと話があって

ぇー、テイにぃー?

ぁーっ、晩御飯食べてくぅーっ!!?
シチュー食いたーぁいっ!!!

材料ある?

あぁ、今日買ってきたから大丈夫だよ。萩が

萩さん…?

ハギハギおっさーぁんっ!!
ひゃはははっ!!

以前一度ここで会った彼の名前は、萩というらしい。
買い物に行ったなら料理が作れるのか?

露草、萩さんは料理が作れるのか?

作れないけどーぉ、俺が潤ちゃぁんに作ってもらおーと思って頼んだーぁっ!!

どうせ近いうちに呼ばれる予定だったということか…。

ってことは、普段何を食べてるんだ?

俺が作ってる

テイの料理不味ぅーい…

形は作れても、味までは上手く作れねぇんだよ

弟が力を使って作っていたようだ。
兄さんは作れないのだろうか。
いつもお茶を入れてくれるし、料理が下手そうには見えない。

兄さんは料理作らないんですか?

兄は駄目だ

ぇ…?

弟が強い口調で言い切った。
もしかして、聞いてはいけないことだったのか…?

包丁なんて持たせて怪我したらどうする

ははっ、いつも大丈夫だって言ってるんだけどね

駄目だ、俺は兄の怪我は直せないんだから

どうして?

それほど重い理由じゃなかったようで安心した。
しかし、俺の傷は治してくれたのに何故だろう。

兄の力が邪魔する

しょうがないだろ?そういう力なんだから

俺を拒否られてる気分になる

弟は横目で兄さんを見て頬を膨らませている。
普段は清ました顔をしているのに、兄さんの話となるとすぐにころころと表情が変わっておもしろい。


次の日も学校だったのでシチューを食べてすぐに帰った。
疲れていたのか、家に着くと着替えるだけで布団に入って夢の世界に意識を飛ばしてしまった。
何故か笑顔の孝に花畑でマーマレードをかけられていた。
たかが夢の中のことだが、流石にシュール過ぎてもう思い出したくない…。
…?暫くたっても目覚ましの音が聞こえない。
案外早く目が覚めてしまったのか?
薄く目を開けてみるが眩しさはない。

何度か瞬きをして目を慣らしてから周りを見回す。

何処だよ、此処…







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