私は奴隷だ。
過去もいまもずっと奴隷。
物心ついた時にはすでに私は奴隷だった。
小さな村の大地主の下品なほどに大きな館。
そこで使用人の駒としてこき使われる奴隷。
どんな貧しい家に生まれたのかは分からないが、
私は生後間もなく捨てられた。
拾ってくださったのがこの館の主様だ。
主様は私に衣食住を与えてくださったが、
代わりに自由を奪った。
赤ん坊の頃に捨てられた身なのだから、
生まれながらにして死んでいるのと同じ――
そう考えれば自由がないのは当然のことなのだけれど……。
しかし、私はいつだって自由を求めていた。
ひとりで敷地から出ることを許されておらず、
お姉さまたちの付き添いとして外出する際以外には、
外を出歩くことができない。
お姉さまたちに自由はあっても、奴隷の私にはそれがなかった。
お姉さまというのはこの館の正式な使用人たちのことで、5人もいるのだけれど、みんな例外なく私に厳しい。
私が奴隷だからなのか、ただ嫌われているだけなのか……。
そのお姉さまたちの付き添いで外へ出る時には、
たいてい荷物持ちや雑用を任されていたが、
私は外を歩けるだけで心躍る思いだった。
お姉さまたちから離れるわけにはいかないので、
自由に村の中を歩けるわけではない。
それでも、お店に並ぶ服や装飾品を見ることはできた。
いつかはお姉さまたちみたいに着飾ったりして、
村の外に出てみたい――
隣の大きな国に行ってみたい――
いろいろなところに行ってみたい――
実現できるか分からないことを幾度となく想像した。
自由になれたら……と。
奴隷でなくなったなら……と。