蒼北君、一緒に帰らね?

流石に昼に続いて話しかけたせいか蒼北君は驚いた表情をしている。

良いけど、俺と帰っても楽しくないよ

良い良い行こうぜー


荷物をしまい終えた蒼北君と教室を出たところでトイレに行っていた隣の席の佐藤と会った。

お、皆川帰んの?

おー、借りてた漫画明日返すわ。
また明日な

ってちょ、蒼北と帰んの?

ん?そうだけど

お前ちょっとこっち来いっ!

はっ!?


何だか良くわからんうちに腕を引っ張られて階段まで連れてこられた。
力強いしなんなんだ。

わかってんのかよ、あの蒼北だぞ?

わかんねーよ

だから、あんな奴といたらお前も変な目で見られるっての!

……なにそれ


なんだよそれ、あいつのことなんも知らねぇくせに……。
いや、俺も知らねぇけど。
なんか、腹立つ。

え、なんて?


佐藤は俺の言葉が聞こえてなかったのかアホ面してる。

なんでもねぇーよ、あほ

あほってなんだおいーっ!!


はぁ、本当ため息しか出ない。
あほだけど、心配してくれてんのはわかってる。
まぁ、蒼北君が良い奴だってわからせれば良いし。

とりあえず俺はなんと言われよーと蒼北君と帰んの

あっそ、まぁ皆川がそうしたいなら別に良いけど

変な目で見られても俺に泣きつくなよー

蒼北君に泣きつくからいーし


へらっと笑う佐藤に笑って返すと、少し安心したようで表情が和らいだ。





ごめん、蒼北君お待たせ


さっきのとこで本読みながら待ってくれてた蒼北君に声をかける。

行こう

おー


昨日と同じ桜の木が並ぶ道を通って二人で帰る。
しばらく歩いた頃には周りに沢山いたうちの学校の生徒もいなくなっていた。

さっき何の本読んでたん?

猫図鑑

猫図鑑?猫好きなんだ

動物全般好き

へー、一番好きなのは?

……猫

ははっ、一番が猫なのか


ガシャッ

ぁ……


近くのコンビニで自転車が倒れたようで凄い音がした。
近づく蒼北君に続くと、7、8台の自転車が倒れていた。
その傍で自分の物らしき自転車を出した男性が一人。

……チッ


舌打ちをしてそのまま自転車に乗って去っていった。

ぁー、だよな。
蒼北君ならそうすると思った……


視線を戻すと既に自転車を戻し始めてる蒼北君。
なんか想像通りってか期待通り?
やっぱりって感じ。

よっ

……手伝うんだな


自転車を起こしていた蒼北君がふと小さく言った。

は?そりゃ手伝うしょ

見て見ぬふりが多い

他人ならあるかも

他人じゃないのか?


なんて素で聞かれて若干傷つく。
まぁ、話したのも昨日が初めてだし。
けどまぁ、

俺はもう勝手に友達だと思ってるし

……あっそ


それにしても蒼北君って、

本当良いやつだな

別に良い人とかじゃない……

いや、さすがにこの数を一人で直してやろうって奴はそういないって

本当、優しさとかじゃないから……


小さくなる声に視線を向けると、なぜか彼は俯いている。






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