神谷優

やっぱり送っていこうか?杏

橘杏子

杏って呼ばないでください

神谷優

やっぱり顔、そっくりだなあ

橘杏子

何かいました?

神谷優

ううん、じゃあね

優くんの呟きに疑問を覚えつつも
私は一礼して歩き出した。

また明日もここに来なくちゃいけないのか・・・

橘杏子

またストーカーが出たら
どうしよう・・・

橘杏子

きゃっ!

もしかしたら・・・なんて
不安は一瞬でとんでいった。

低木に隠れていたのは、
夏子さんと帰ったはずだった結城だった。

坂田結城

よっ!

橘杏子

夏子さんと帰ったんじゃないんですか

坂田結城

送ったよ?
けど、話したいことが
あったから来ちゃった

橘杏子

何の用です?

坂田結城

そういえば
付き合ってるって本当?

その時、彼の眉が少しだけ動いたのに気が付いた

橘杏子

ノーコメントで。
それでなんなんです

坂田結城

やっと心の決心がついたから
聞いてほしい。

橘杏子

本当ですか?

坂田結城

ああ、だから
家に寄っていかない?

橘杏子

分かりました。
話聞いたらすぐに帰りますから

坂田結城

はいはい。

というと、私の持っている荷物を
何も言わずに持ってくれた。
やっぱりこういうのには慣れているから
こんなこと自然とできるのだろうか

橘杏子

最近胸が痛いや・・・

優に散々言われた言葉が脳裏に響いている。

そんなんじゃない。
私は彼の母代わりになってあげたいだけ。
必死に何かに言い訳をしながら
私はそっと見上げ、結城の顔を見た。

その顔はどこか儚げで
でも彼の目に迷いはなかった。

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