男は前を歩いていた男子高校生に問いかけた。
その声に男子高校生は気付き振り向く。
いやこの場合は『気付く』というより『知っていた』と表現するべきだろうか。
おい、答えろお前は何をした?
男は前を歩いていた男子高校生に問いかけた。
その声に男子高校生は気付き振り向く。
いやこの場合は『気付く』というより『知っていた』と表現するべきだろうか。
おやミズタニさん、傷だらけですね。
何かあったんですか?
拳銃を向けられながらもおどけたように少年は喋る。
とぼけるんじゃあねぇよ。
ラプラスの悪魔。
それは私があなたたち人間に与えた技術じゃないですか?
お前がラプラスの悪魔と名乗って安藤文也と被験体に接触してたのは知ってんだよ。
やはりばれてましたか。
それともお前はこう呼んでほしいのか?
ナイアーラトッテプ。
その言葉を聞いた男子高校生の口が三日月のように笑う。
とても邪悪で冒涜的な笑みだ。
アクセントがおしい!
まあ、人間にしてはうまく発音できたんじゃない?
発音練習に来たんじゃねえんだよ。
答えろ!お前は何をした!
貴方たちが知らないルールを一つ教えてあげただけですよ。
俺たちの知らないルール?
ええ、そうですよ。
まさか全て知っているつもりだったんですか?
傲慢ですねぇ。人間って。
何故そんなことを…?
俺たちは協力関係だったんじゃないのか?
暇つぶしですよ、あと人間嫌いなんで。
面白いですよ、新しいおもちゃを与えられてはしゃいでる人間を潰すの。
てめぇ…!
そんな理由で俺の部下をよくも…!
数時間前
主任!!被験体が自殺しました!!
なに!?そんなはずはない!
彼女の死は62年後のはずだ!!
数値急低下…!
また数値が変動しただと?!
どうなってやがる!
……!!
大変です!主任!!
我々の数値が急上昇しています!!
100…150…200…!!
死亡予定…11月22日…今日です…!
……!!
この研究所は破棄が決定された。
研究員およびクローンは秘密保持のためすべて殺処分だ。
なんだと!?
撃ち方用意………撃て。
瞬間まだ何が起きたこと理解できていない研究員たちは次々と肉塊と変わっていった。
くっそ!総員退避!
そんな怖い顔しないでくださいよ。
人の命をなんだと思ってやがる!
!!
ぷははははははは!!
まさかあなたからそんな言葉が聞けるなんて…
ぷ……ははははははははは!
俺たちは人類の技術向上のためだ!
お前とは違う!
一緒ですよ。大儀名文があるだけで本質は変わらない。
私が地球のために人類滅ぼすといえばいいだけですから。
おっとこんな時間ですね。
時間厳守っと。
そろそろ失礼…
してくださいね。
え…?
よい夢を。
よい夢といえば、あの二人はいい暇つぶしになりましたし少し温情をね。
………………
俺は死んだ。
これからどうなるんだろうか。
それはこの道をたどればわかるだろう。
それだけはわかる。この道は死者の道だ。
………皮肉なものだ、ここは俺が一番守りたかった帰り道じゃないか。
亜里沙は実験から逃れることができただろうか。
しばらく歩いたところに人影があった。
それはよく知っているものだった。
そしてその人影はこちらに気づいたようだ。
あ!
文也!おっそーい!!
なんで…ここにいるんだよ…亜里沙…
ごめんね…きちゃった…
…なんで来ちゃうんだよ…
…文也が……
好きだからかな…へへ…
……………亜里沙
やっと言えた、私の思い。
俺も…
俺もずっと好きだったよ…
も、もう!普通男子から言ってよね!!
手を繋いで行かない?
う、うん
文也緊張してる~
っるせ!
はははははは
それから彼女と歩いた。
小学校、中学校、高校、いろいろな話をした。
これまでチョコは俺にしか渡さなかったとか。
お前いつも義理って言ってたじゃんとか。
楽しかった。
これまでで一番楽しかったかもしれない。
だけど、その時間も終わりだ。
もうすぐ終着点。
そこで亜里沙が不意に切り出してきた。
ねえ、私たち次もまた逢えるかな?
俺は知っている。
この答えを。
しかしそれを知っているのは俺だけじゃない。
そう亜里沙も知っているのだ。
だから俺はこう答えるべきなのだろう。
…………きっと…
逢えるさ。
これが最後の嘘だ。
これは亜里沙の望んだ安心させる嘘だっただろうか。
そっか。
そうだよね!
逢えるよね!
ああ…それじゃあ…
うん…またね!
さよなら、僕の初恋。