何これ何これ!!
……よし
早めに来たのは認める
でも
待ち合わせ時間10分過ぎたんですけどー!
すみません
遅れました!
……っ
すみません……怒ってます?
……まあね。怒ってる
真顔で言わないでください
だって想定内だし
まあ、許してやろう
随分と上から目線ですねー
…………
何これ何これ!!
…………?
よく考えたら私服姿初めて見た……っ
何この『とりあえず着てきました』感が溢れ出るスウェットのズボン!!
なんか髪跳ねまくってるし……どう考えても寝癖!!
なんか逆にいい!!
…………いや、落ち着け私
すみません、寝坊しました
……いや、待って、もう三時
なるほど! 寝癖か!
寝癖なのか!!
いやぁ、早く起きようと思って早めに寝たんですけど……珍しく起きたのが七時でして
これは溜まっていたアニメを見るチャンスだと思いましてね? DVDが結構溜まっていたんですよー
で、七本ほど見て眠気が襲ってきたので
ちょっと眠って起きたら二時五十分!
着替えもしていない状態だったんでめちゃくちゃ焦りました
……ほう。自業自得って奴だね
佐島くんの家から学校までっ片道二十分とか言ってたことあったかな
準備の時間を含めると相当走らなきゃならないんだよね……
いやぁ、もう諦めようかと思ったんですけど、約束しっちゃった身ですからね
約束のためにめちゃくちゃ急いできてくれるとか……
いろいろ前提はあるけどもう普通に好き!
いやいや、落ち着け私。結局こいつは約束の時間破っているからな?
それで、今日は何で待ち合わせを三時にしたんですか?
ああ……ちょっと付き合って欲しい場所があって
ほう……?
じゃあ、行くよ
はい……?
よし、計画実行開始!
はい、着いた
ちょ、ちょっと待ってください
ん?
どこですか? ここ
そりゃあ、見ての通りジャズコのファッションエリア
ど、どうして僕がこんなおしゃれな空間に足を踏み入れなければならないんです?
私が服を買いたいからだ
答えになっていません!
いい? 私は二次元が大好きだ
知っています
逆に! 三次元には興味がない!
知っています
だからあんまり私服のバリエーションがないんだ
買い物行くって言ったって本屋かメイトくらいだし
……それで?
服を買いたい
……僕が同行する意味は?
私がこんなおしゃれな空間に一人でいられると思うか!?
…………
いや、そこは頑張ってくださ……
とにかく行くのぜ!
えー
……うわー、めちゃくちゃ強引だ私!
で、鈴石さんはどんなのが欲しいんです?
んー……佐島くんはどんなのがいいと思う?
僕ですか……?
僕はあれですね、フリルのついた可愛らしいワンピースに赤いランドセルをセットにして……
このロリコンが!
冗談ですよ
まあ現実的に考えるならシンプルイズザベストって感じじゃないですか?
そのシンプルってラインが分からない
んー……鈴石先輩は何色が好きですか?
んー……黄色とか緑とか間色系かな
じゃああれとかどうです?
あの黄色のワンピース
あれは……ちょいと派手すぎやしませんか?
いや、狐草子の狐ちゃんに着せたらめちゃくちゃ似合いますって
おい待て!
まあ鈴石さんにも似合うと思いますけどね
まあって……
それともあれですか? あのピンクのフリルが付いた白色のワンピースとか?
よ、よく見るとこの黄色のワンピース、デザインもシンプルだし可愛いかも
ほらー、そうでしょう?
試着、してみていい?
まあ、ご自由に
ありがとう
どう? これ!
うわっ
突然出てこないでください。びっくりしました
んー……でもなんか
ん?
ちょっと、幼すぎるような気がしてきました
そう?
狐ちゃんやあやりんが着るには申し分ないんですが、鈴石先輩はちょっと……
そう……か
うーん……
あのですね、
あそこに白いスカートあるじゃないですか
あるね
あれにあっちの黄色のブラウス重ねてみたらどうでしょう
あのスカートだけだとリボンもついていてちょっと子どもっぽいかもしれないですけど
あのブラウスを重ねたらよさそうだなって
……なるほど
やってみる
はーい
……どう?
うわっ そろーっと出てこないでください
さっきと言っていることが違う!
でも、まあ、いいんじゃないですか?
煮え切らない反応だな
そういえば、こんなのがあったんですけど
これは……
魔法少女(仮)で黒魔術師アクロが自らの力を封じるべく首から下げていたデ・クレッセンド・シャンデル・クロス
に、そっくりでしょう?
うん!
これもつけたらどうです?
確かに、アクセントになっていいかも
まあこれを付けると鈴石先輩は黒魔術を使えなくなってしまうんですけど
それは困った!
…………
…………
駄目だ、ツッコミ役が不在の中でこういう会話するのはやめようか
そうですねー
じゃ、買ってくる
はい
あ、靴
靴?
いやぁ、靴を買ってなかったなって
別にいいじゃないですか
でも……
今の白いヒールの靴、結構似合うと思うんですけど
え……
だ、誰に?
鈴石先輩に、です
狐ちゃんだったらお花のついているようなピンクとか黄色とかのサンダルが似合うと思うんです
あー……うん
じゃ、じゃあ靴はいいか
はい。じゃあ早く買ってきてください
僕はもうこれ以上こんなおしゃれな空間にはいられません
私もだよー。行ってきます
………なんか
てっきり自分の好きなキャラに合うものを選ぶと思っていたのに……
私に似合うものを選んでくれたってことだよね……?
なんか……
佐島くんを知るたびに、もっと好きになっている自分がいる
好きって気持ちは無制限……
……なのかな。
なんか、このドキドキに耐えられるのか逆に心配になってきた……
彼らのデートはまだまだ続く。