鈴石茜

……よし

鈴石茜

早めに来たのは認める

鈴石茜

でも

鈴石茜

待ち合わせ時間10分過ぎたんですけどー!

すみません

佐島亮

遅れました!

鈴石茜

……っ

佐島亮

すみません……怒ってます?

鈴石茜

……まあね。怒ってる

佐島亮

真顔で言わないでください

鈴石茜

だって想定内だし

鈴石茜

まあ、許してやろう

佐島亮

随分と上から目線ですねー

鈴石茜

…………

何これ何これ!!

佐島亮

…………?

よく考えたら私服姿初めて見た……っ
何この『とりあえず着てきました』感が溢れ出るスウェットのズボン!!

なんか髪跳ねまくってるし……どう考えても寝癖!!

なんか逆にいい!!

鈴石茜

…………いや、落ち着け私

佐島亮

すみません、寝坊しました

鈴石茜

……いや、待って、もう三時

なるほど! 寝癖か! 
寝癖なのか!!

佐島亮

いやぁ、早く起きようと思って早めに寝たんですけど……珍しく起きたのが七時でして

佐島亮

これは溜まっていたアニメを見るチャンスだと思いましてね? DVDが結構溜まっていたんですよー

佐島亮

で、七本ほど見て眠気が襲ってきたので

佐島亮

ちょっと眠って起きたら二時五十分!

佐島亮

着替えもしていない状態だったんでめちゃくちゃ焦りました

鈴石茜

……ほう。自業自得って奴だね

鈴石茜

佐島くんの家から学校までっ片道二十分とか言ってたことあったかな

鈴石茜

準備の時間を含めると相当走らなきゃならないんだよね……

佐島亮

いやぁ、もう諦めようかと思ったんですけど、約束しっちゃった身ですからね

約束のためにめちゃくちゃ急いできてくれるとか……

いろいろ前提はあるけどもう普通に好き!

鈴石茜

いやいや、落ち着け私。結局こいつは約束の時間破っているからな?

佐島亮

それで、今日は何で待ち合わせを三時にしたんですか?

鈴石茜

ああ……ちょっと付き合って欲しい場所があって

佐島亮

ほう……?

鈴石茜

じゃあ、行くよ

佐島亮

はい……?

鈴石茜

よし、計画実行開始!

鈴石茜

はい、着いた

佐島亮

ちょ、ちょっと待ってください

鈴石茜

ん?

佐島亮

どこですか? ここ

鈴石茜

そりゃあ、見ての通りジャズコのファッションエリア

佐島亮

ど、どうして僕がこんなおしゃれな空間に足を踏み入れなければならないんです?

鈴石茜

私が服を買いたいからだ

佐島亮

答えになっていません!

鈴石茜

いい? 私は二次元が大好きだ

佐島亮

知っています

鈴石茜

逆に! 三次元には興味がない!

佐島亮

知っています

鈴石茜

だからあんまり私服のバリエーションがないんだ

鈴石茜

買い物行くって言ったって本屋かメイトくらいだし

佐島亮

……それで?

鈴石茜

服を買いたい

佐島亮

……僕が同行する意味は?

鈴石茜

私がこんなおしゃれな空間に一人でいられると思うか!?

佐島亮

…………

佐島亮

いや、そこは頑張ってくださ……

鈴石茜

とにかく行くのぜ!

佐島亮

えー

鈴石茜

……うわー、めちゃくちゃ強引だ私!

佐島亮

で、鈴石さんはどんなのが欲しいんです?

鈴石茜

んー……佐島くんはどんなのがいいと思う?

佐島亮

僕ですか……?

佐島亮

僕はあれですね、フリルのついた可愛らしいワンピースに赤いランドセルをセットにして……

鈴石茜

このロリコンが!

佐島亮

冗談ですよ

佐島亮

まあ現実的に考えるならシンプルイズザベストって感じじゃないですか?

鈴石茜

そのシンプルってラインが分からない

佐島亮

んー……鈴石先輩は何色が好きですか?

鈴石茜

んー……黄色とか緑とか間色系かな

佐島亮

じゃああれとかどうです?
あの黄色のワンピース

鈴石茜

あれは……ちょいと派手すぎやしませんか?

佐島亮

いや、狐草子の狐ちゃんに着せたらめちゃくちゃ似合いますって

鈴石茜

おい待て!

佐島亮

まあ鈴石さんにも似合うと思いますけどね

鈴石茜

まあって……

佐島亮

それともあれですか? あのピンクのフリルが付いた白色のワンピースとか?

鈴石茜

よ、よく見るとこの黄色のワンピース、デザインもシンプルだし可愛いかも

佐島亮

ほらー、そうでしょう?

鈴石茜

試着、してみていい?

佐島亮

まあ、ご自由に

鈴石茜

ありがとう

鈴石茜

どう? これ!

佐島亮

うわっ

佐島亮

突然出てこないでください。びっくりしました

佐島亮

んー……でもなんか

鈴石茜

ん?

佐島亮

ちょっと、幼すぎるような気がしてきました

鈴石茜

そう?

佐島亮

狐ちゃんやあやりんが着るには申し分ないんですが、鈴石先輩はちょっと……

鈴石茜

そう……か

佐島亮

うーん……

佐島亮

あのですね、

佐島亮

あそこに白いスカートあるじゃないですか

鈴石茜

あるね

佐島亮

あれにあっちの黄色のブラウス重ねてみたらどうでしょう

佐島亮

あのスカートだけだとリボンもついていてちょっと子どもっぽいかもしれないですけど

佐島亮

あのブラウスを重ねたらよさそうだなって

鈴石茜

……なるほど

鈴石茜

やってみる

佐島亮

はーい

鈴石茜

……どう?

佐島亮

うわっ そろーっと出てこないでください

鈴石茜

さっきと言っていることが違う!

佐島亮

でも、まあ、いいんじゃないですか?

鈴石茜

煮え切らない反応だな

佐島亮

そういえば、こんなのがあったんですけど

鈴石茜

これは……

鈴石茜

魔法少女(仮)で黒魔術師アクロが自らの力を封じるべく首から下げていたデ・クレッセンド・シャンデル・クロス

佐島亮

に、そっくりでしょう?

鈴石茜

うん!

佐島亮

これもつけたらどうです?

鈴石茜

確かに、アクセントになっていいかも

佐島亮

まあこれを付けると鈴石先輩は黒魔術を使えなくなってしまうんですけど

鈴石茜

それは困った!

佐島亮

…………

鈴石茜

…………

鈴石茜

駄目だ、ツッコミ役が不在の中でこういう会話するのはやめようか

佐島亮

そうですねー

鈴石茜

じゃ、買ってくる

佐島亮

はい

鈴石茜

あ、靴

佐島亮

靴?

鈴石茜

いやぁ、靴を買ってなかったなって

佐島亮

別にいいじゃないですか

鈴石茜

でも……

佐島亮

今の白いヒールの靴、結構似合うと思うんですけど

鈴石茜

え……

鈴石茜

だ、誰に?

佐島亮

鈴石先輩に、です

佐島亮

狐ちゃんだったらお花のついているようなピンクとか黄色とかのサンダルが似合うと思うんです

鈴石茜

あー……うん

鈴石茜

じゃ、じゃあ靴はいいか

佐島亮

はい。じゃあ早く買ってきてください

佐島亮

僕はもうこれ以上こんなおしゃれな空間にはいられません

鈴石茜

私もだよー。行ってきます

鈴石茜

………なんか

鈴石茜

てっきり自分の好きなキャラに合うものを選ぶと思っていたのに……

鈴石茜

私に似合うものを選んでくれたってことだよね……?

鈴石茜

なんか……

佐島くんを知るたびに、もっと好きになっている自分がいる

好きって気持ちは無制限……

……なのかな。

鈴石茜

なんか、このドキドキに耐えられるのか逆に心配になってきた……

彼らのデートはまだまだ続く。

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