記念すべき第一回里の会合に参加した住人達。
とある宿で丸木テーブルを囲み話し合いという名の雑談が繰り広げられていた。




……という訳で
これからこの里の長を決めたい
立候補したい者は挙手してくれ

里長ねえ……
つまり私達のリーダー決めるって訳ね

やっぱり強い奴いいんじゃないかなあ
里の代表でしょ
里の絶大的な力を誇示するために圧倒的な力が必要だと思う

もっと平和的にいこうよ…ヨトリ
ここは地下墓地とは違うんだからさ

力だけが全てじゃない
勤勉さ賢明さも必要じゃないのか

へえ……
地上の生物は情けない遠吠えを
吐くだけのひよっこを
リーダーに選ぶんだ

力主義の野獣を長に選ぶのもどうかと思うよ
理性もなさそうな野蛮な奴より
知性が高い者を押すのは当然の選択じゃないか?

言うね……
じゃあどっちが優れているか
宿の外で真剣勝負する?

私負ける気はないけど

両者ともそこまでだ
私達は喧嘩しに集まったのではない

まあ、そうだね
話し合いの場に暴力を
持ち込むのはご法度
悪かった、謝るよ

話し合い、ねえ……

森子先生が言うのなら
今回は黙って大人しくする

『先生』はいらないっ!

……ボクは
森子さんが一番里長に
相応しいというか
その方が安心するというか

そうか?

その、なんていうか……
ヨトリのことも上手く対処してくれるかなって

勿論、他力本願なのはわかっている
……けど
ボクじゃ言い負かされて
収集つかないこともあるから

ネロは色々苦労しているんだな

里長の件は保留にしておくが
何か困ったことがあれば相談してほしい
できる限り力になりたい、協力する

……ありがとう 
森子さん

なんで私がしつけの利かない
野犬扱いにされてんの

自分の胸に手を当てて
きいてみるといい
思い当たる節がたくさんある筈だよ

ふーん…
あなたの左胸を陥没するぐらい
押し当てたら少しはわかるかもね

さらりと怖いこと言わないの!

立候補者がいないようだから
仕方ない…
公平的且つ平和的な方法で決めよう

髪を一枚取り出し羽ペンで何やら書き出す
そしてテーブルの中央に置いて皆に見せた

これは……
あみだくじか?

そうだ
くじなら不正なく決められる
好きなところに名前を書いてくれ

なるほどね
森子先生の案に異存なし
じゃ、私はこれにする

ボクはヨトリの隣で……と

書いたよ
後は君だけだ 森子

……よし
では結果を発表する
文句は一切受け付けない

オッケーだよ

あ…………

あの……どうかしたの?

私だ

……え?

里長は……私だ

結果オーライだな
実際、この中で一番しっかりしている

うんうん
そこは同感

なぜだろう
今のメンツを見ていると
この先不安しか見えてこないのだが

えっと……その
困ったことがあれば
私も手伝うから

あ 私も手伝うよ
喧嘩事なら喜んで加勢する

それは逆に事態を悪化させるだけだ

はあ……
やっぱり不安だ






くじで公平的に決めた里長。
後々、住人達が持ってきた厄介事に巻き込まれ頭を抱えることになるとは知る由もなかった…

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