もう!文也どこ行ってたの!私わざわざ文也の家まで行ったんだからね!!

亜里沙は亜里沙だ。クローンなんて考えるな。

ああ、少しコンビニ寄ってた。

いやあ、新刊出たから立ち読みしよっかなーって。

嘘。

え?

いつもだったら、『コンビニ行ってた』しか言わないもん。

それに今は袋に閉じられてて立読みできないーって嘆いてたじゃん。

ばればれだな。

毎日会ってるからね。

それにこの頃文也変だよ。
昨日はあんまり喋ってくれないし、一人で帰っちゃうし。今朝なんて怖いくらいだったよ。

…亜里沙にはかなわないな。

ふっふーん!当たり前でしょっ!

まあ、今はその嘘聞かないであげる。

…ごめん。

そこはありがとーでしょ。

ありがとう。

なんてざまだ。

亜里沙の死を食い止めるつもりが俺が励まされてる。

これじゃ、立場が反対だ。

それにしても、文也が私に嘘つくの二回目だね。

なんでそんなこともカウントしてんの。

さあ~なんででしょう?

小学校の頃、私はいじめられていた。

ある放課後私のランドセルの中身がすべてなくなっていた。

ない!どこにもない!

どうしよう…このままじゃ帰れない…

いろんなところを探し歩いた。

廊下、中庭、校庭。

ついに探しきれなくなった私は教室に戻ることにした。

どうしよう…

!!

教室のドアを開けた先には
文也が私のランドセルをいじっていた。

やめて!!

また何か取られるのではないかと思った私はランドセルに駆け寄った。

…あれ全部揃ってる。

全部見つけといた!!大変だったんだぜ!!

彼をよく見ると泥だらけだった。

全部あるから安心しろよ!今度は取られんなよ!

そういうと彼は帰ってしまった。

帰って持ち物を確認したら
泥だらけの教材の中にいくつかきれいな教材が混じっていた。

泥で汚れなかったんだ。よかった。

あれ私のノートと色違う…

そこには『あんどうふみや』と幼い字で書かれていた。

同様の教科書もあった。

彼は見つけられなかった教材を自分の教材で補っていたのだ。

…あんどう…ふみや。

以後彼はなんども私を救ってくれた。

もちろん私にとってかけがえのない大切な人になったのは言うまでもない。

……やさしい嘘つき屋さん

なんか言ったか?

なんでもない♪

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