……運命?

あまりにも突飛な質問だった。

亜里沙が生き返った説明ではなかったのか?

そうだ。
運命。

信じるも何も質問の意図がわからないんですが。

そうだな、なら君は『ラプラスの悪魔』は知っているかね?

ラプラスの悪魔。
確かすべての物体の運動量知ることができたら……

後はなんだっけな
と悩んでいると。

簡単に言うと全ての原子の位置と運動量がわかれば、未来がわかる、という考え方だ。

はぁ…

そこでだ。
このラプラスの悪魔が実際あるとしたら?

は?

端的に言おう。
私たちは未来予測に近いことができる。

え?

なにをいってるんだこいつは。

話が急にぶっ飛んでいて頭がついていかない。

いい年こいたおっさんがイタイこといってるんじゃないっすよ。

いやいや、ほんとだよ。
この技術は我々でも最新の物でね。
クローン技術が50年後なら、この技術は100年先だろう。

もしそれがあるとして亜里沙に何の関係があるんすか。

あるわけないがとりあえず話を進めよう。
トンデモ話はこりごりだ。

いや、目の前で死んだ人間が生きているのもトンデモ話か。

さあ、ここからが本題。
我々がする予測は人物の人生がどのように変化するかを数値化するものなんだ。

普通の人間は50から60。
100を超えると宝くじに当たったりする。
しかし150を超えると急死、死刑囚になったりする。

亜里沙ちゃんは300。

人類で一番数値が高い人間だ。

…………………………

おや、驚かないのかい?

いや、そんなわけがわからない数値聞いても。

ならば宣言しよう。
彼女はもう一度死ぬ。

もう一度…?

君も一度は見たんだろう?
彼女の死に際を。

けど亜里沙は生きている。

おいおい。
奇跡的に助かったとでも思っているのか?

お前らが亜里沙の体をいじったりしたんじゃないのか?

あれは即死だよ。
我々の技術でも無理だ。

じゃあ今の亜里沙はいったい…

今の彼女はクローンさ。

クローン…?

ちなみにクローンでも数値は変わらない、とミズタニは付け加えた。


クローンなはずがない。
なにも亜里沙はかわってなかった。
記憶もあったし仕草も一緒だった。

記憶は彼女が寝付くと情報化され共有される。君の情報もたくさんあったよ。

ッ!

そうそう怖い顔するなよ。

……亜里沙は知っているのか?

答えはNOだ。
しかし両親からは許可はとってある。

!!!

そんなはずはない!

ありえない。
あの二人が実の娘をこんな実験に関わらせるはずがない。

本当だとも。
今度、確認してきたらどうだい?

ああ、そうさせてもらう。

おっともうこんな時間か。
そろそろ帰らせてもらうよ。

男は立ち上がると思い出したようにこちらを向き

最後に一つだけ一週間以内に彼女は死ぬ。
そして死んだらまたクローンを送ってあげるよ。

じゃあね、と言いこの場を去った。

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