今日は遊んだねー!

 帰りの電車、俺たちは横並びの椅子に座る。

だねー、イルカショーではしゃぐ誠人、可愛かったねー

るせーな!

あははっ! 楽しかったねー杏月ちゃん!

うん……

 杏月は俺の横でそう頷きながら、自分の髪を指でくるくると遊んでいる。

お前、眠たいんだろ

 真帆もよくやっていた仕草だ……。

だい……じょぶ……

 うつろな瞳でこっくりと頭を揺らす杏月。

ははっ、肩貸してやれよ誠人!

おきてるおー……

ふわっふわだな、おい

むにゃ……

 限界がきたのか、俺の肩に杏月は頭をもたれかける。

(ぼた子か……)

 そういや、誰かが真帆に似てるとかって言ってたっけか。
 こんなガキっぽい奴のどこが似てんだよ。


 ……まあファンタジーが好きなとこは気が合う。
 嘘のつけなさそうな真っ直ぐさも、一緒にいて気が楽である。
 世話焼きな女には、結構弱い俺。
 声も若干ウィスパーボイスで俺の好みだ。
 さらさらロングヘアも……

(って、何考えてんだ……)

 違う。

 俺は真帆を忘れないんだ。

 真帆が好きだから、長い髪が好き。
 真帆の声が好きだから意識する。
 世話焼きな真帆に甘えていた俺。

 俺は真帆を忘れない。


 ……俺は真帆を忘れられない。

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