スモークに包まれ登場した裕貴たちの、バンド演奏が始まる。

~♪

 モニターに足を乗せ、迫力のある歌声で盛り上げるボーカル。

かっこいい……

だねー! ほら、前行こっ!

モッシュがあるかもしれんから気を付けろよ

そっかー、今日は様子見かなっ!

そういえば、秋も歌うまいんだよーっ

秋? 誰だそれ?

あっ……なんでもないの

(秋、どうしてるかな。思い出すと切ないなー)

(私との想い出が消えて……でも歴史が入れ代わるわけじゃないから、きっとさっきみたいに誰にでも優しい宮川秋のままなんだろうな)

(希伊子ちゃんと付き合ったりしてるのかな。お似合いだし。でも胸がもやもやする。嫉妬かな。欲張りな私。最低……)

 ライブも後半になり、最高潮に盛り上がっている。

それでは、今日はとっておきのカバーをやるよー

 沸き上がる歓声。
 初ライブとはいえ、もとからそれぞれバンドしてた奴の集まりだからな。
 前のファンが来ているのだろう。

Flyleafの……

わー洋楽!

All Around Me……

……

 今までの曲とは違うゆっくりとした、でも激しく綺麗な曲。

 真帆がよく歌い、好きだった曲……。

いい曲だねー

 杏月がこっちを向いて話しかけてくる。

ああ……

俺は俯き、顔を逸らしながらそう言った。

涙を堪えるのに必死だったから。



こうしてライブは大歓声ののち、終幕を迎えた。

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