ふわあああ

 ドアにもたれ掛かり大あくびをする私。

公衆の面前で君は……羞恥心というものがないのかい

はう……。ごめっ、まだ眠くって

 眠たい目をこする。

 ああ、昨日は楽しかったな。
 秋とカラオケ。
 友達と放課後ライフをエンジョイできているんじゃないの私。

 ついにきた。
 私の時代が。

 けど秋ってやっぱ、彼氏ってゆーより、友達でいたい。
 付き合ったらいつか別れがくるかもだし。
 ずっと一緒にいれたらって思う。

 そんな事を考えながら、ふと奥の座席に目をやると、見たことのある男子の姿があった。

……

 あ、堀坂誠人だっけか。
 いつも同じ電車なのかな。
 初めて見かけたけど。

 そういや、こないだ校舎裏でなぜか一緒にいたんだよね。
 ウリエルに聞くと、やはり私が自分で記憶を消すよう頼んできたと言ってた。
 消した内容までは教えてくれないけど。

 もしかして何か、悪いことしちゃったのだろうか。
 それなら私の記憶を消しても意味ないと思うけど。

 駅にとまり、乗客が入ってくる。

どうぞ

すまんのう

(へー……)

 冷たい感じかと思ったら、優しいとこあるじゃん。

……

(わっ、こっちにくる……!)

 ドアの方へ向いて隠れる私。

どうして隠れるのだ?

(別に隠れる必要はないんだけど……なんとなく)

 私の隣に立ち、本を読みだす彼。
 私には気づいていないよう。

ちらっ

 彼の顔を横目で見る。

 しかし本当にイケメンだー。
 ま、特に私には関係のない話だけれど。

(なんの本を読んでるんだろ)

……

ちらっ

……

あー! これ凄い面白いよねー!

は!?

 しまったー!
 うっかり声をあげてしまった私。
 皆の視線が集まる。

すみません……

なんだよ急に……

自分も読んでる最中の小説だったので、つい……

 同じ小説を読んでる人って、なんか嬉しかったんだもん。

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