ごめんなさい……

 自分のせいではないかもしれないけれど、人を悲しい顔にさせるのは辛い。

あ、でもね! ウリエルって記憶とかを無かったことにする力があるんだよっ!

なかったことに……

うん! もしあれだったら、そういう願いなら!

じゃあ

……今お前に話したこと、無かったことにしてくれないか

え……

俺が今お前に話したこと、聞かなかったことにして欲しい

そ、それは私にとってちょっと寂しいんだけど……

昨日の事もそうしたんだろ?

ううっ……返す言葉もないですが……

同情されんのが嫌なんだ。頼む

……わかりました

 そう頷いて私は肩を落とす。

ふむ。では消して進ぜよう

あ、あれ? 私どうしてここに……

……

 そこへ誰か走ってくる足音がした。

杏月ちゃん!

秋? どうしたの?

本当に願いは叶ったようだな

 そう言って立ち去る男子。

……誰?

同じ学年の……確か堀坂誠人?

何されたの?

え? 何で?

なんか一緒にいた男子と凄い剣幕で、急に校舎裏に走っていったって校門にいた女子達が言ってたぜ

そうだっけ? ぜーんぜん大丈夫だよっ……!

じゃあ、なんでそんなに悲しそうな顔をしてたの……?

なんでもないよ……

(たぶん)

 精一杯の作り笑顔で返す私。

 何があったか覚えていない。
 だがウリエルによって私の何かが消された事だけは、なんとなく理解できた。

そ……っか。何かあったら本当、言ってくれよな

pagetop