Part-A
『西岡杏月』
Part-A
『西岡杏月』
あ、あのっ……
ん?
昨日はすみませんでした……
昨日? つかお前、誰?
す、すごい……! 本当に消えてる!
どうだね? 我の力は
なかったことになってました。
これはヤバい力です。
あれ? でも何で私は覚えてるの?
それはだね、余談になるが、消し方は二種類あるのだよ
一つは、君だけ覚えていて君以外全人類の歴史から消すというもの
もう一つは、逆に君の記憶を消す方法。この場合、他の者は覚えておるがな
ふーん……
二個目の、私の記憶だけ消えるなんてのに意味あるのかな?
ま、とにかく素晴らしい力だ。
なかったことにできるなんて夢のよう。
ちなみに一度消したものは元に戻らないから気を付けるのだよ
元に戻らない……って何か怖いけれど。
別に戻して欲しいようなことは願わないから大丈夫じゃないかな。
じゃ、じゃあ、中学時代の黒歴史も消してくれたりする……!?
うむ。よいぞ
えっと、ノートに名前と四十秒以内に死因を書くんだっけ?
それは番組が違うぞ!
で、どんな黒歴史なのだ?
厨二病だった事を消して欲しいのだけれど
なんだねそれは
んー、口で説明しにくいから写真とかでもいい?
無論だ
絶対笑わないでよね……?
そういって私は、厨二病全開の頃の写真を出す。
ほう、かっこいいではないか
ソードマン時代ね
何これ?
ソードダンサーに転職したのよ、見たらわかるでしょうが
これは?
教祖になろうとしたのよ
……これは?
教祖になれなかったから、教団員になったのよ
ぷくく……もう顔すら見えてないではないか
もう! 笑わないでって言ったのにー!
お化けとかはダメなのに、こうゆうのはいけるのだな
厨二とホラーは全然違うしっ!
よし
その黒歴史……消して進ぜよう
うまく……いった?
うむ。もう黒歴史は消えているのだ
ほんとっ!? じゃ、じゃあ……
押し入れから卒業アルバムを探し出す。
あった! これに確か……
厨二病だった私は、中学の卒業アルバムのクラス寄せ書きに恥ずかしいセリフを書いた。
みんなが素敵な看護師になるとか、同窓会しよーぜとか書いてある中……
君はなんて書いたのだ?
……奴の鎖が断ち切られた時、絶望の闇が世界を包むだろう。だが、檻の中で共に暮らした同胞たちよ。その時は私が守ってやろう
ぶはは! 守ってちょ!!
うるさいうるさいうるさい!
ウリエルは飛んで行った。
さて……どれどれ
寄せ書きのページを見ると……恥ずかしい文章が消えているではないですか!
よかった……
……けど、私だけ何も書いてないようになるのね。まあ、いいんだけど
こうして、恥ずかしい中学時代の黒歴史も消えた。
なかったことにできる力を持った破壊天使と黒歴史まみれの私は、こうしてリア充を目指すための生活が始まったのだった。