Prologue...

大好きです……

付き合ってくれませんか?

 とある瞬間に一目惚れした男子を、手紙で屋上へ呼び出した私。

 一世一代の告白をした。

えっと、誰だっけ?

2年A組の西岡杏月(あづき)です

で、俺のどこが好きなの?

か、顔ですかねっ……

んー、俺、外見で判断する子とは付き合わない

せ、性格も好きなんですーっ!

話すの初めてじゃね? 俺の何がわかるんだ?

お願いです! 試しに付き合ってみませんかっ!?

試しにって……。だいたい俺、今彼女……

じゃ、じゃあ、二番目でもいいのでっ……!!

 何言ってんだ私……。

……もっと自分を大切にしたほうがいいんじゃないか

 優しい……

私にはもう堀坂くんしかいないのっ!

 涙目になる。

ごめ……重いわ。これも返す

 こうして、手紙も突き返されたのであった。

 本日、人生初の告白に失敗し、とぼとぼと帰宅する私。

 二番目でもいい……?

 付き合った経験もない私が?

うわあああああ

恥ずかしさに高速ゴロゴロする。

 何言っちゃってんだろ。

はあ……

 消えてなくなりたい。

 高校ではリア充生活エンジョイするんだって決めたのに……。

 中学の自分を知ってる人がいないよう遠い学校を選んだはいいけど、友達の輪にも入れず早や一年。




 せめて彼氏をって思ったんだけど、浅はかで馬鹿だった。

絶対軽い女だと思われたよー

 きっと今日のこと、みんなに言いふらされるんだ。

ああ、もう学校行けない、行きたくない!!

 枕に八つ当たりしながら、涙が溢れ出てくる。

いっそ、ひきこもりに……

 その時だった。

 突如、隕石でも落ちてきたかのような轟音と眩い光が部屋を包んだ。

きゃー!!

うぎゃああああ!!

アイアンメイデンから出て来た男は、私に向かって呟く。

我は四大天使が一人、ウリエルだ……

むりむりむりむりー!!

 お化けとかそうゆうの無理なんですけど!!

天使だってば

天使って、どうみても悪そうですけどっ!?

うむ。そうなのだよ……

助けて! 北鎌倉さん!!

ハイネくんでも無いってば……

from 相続遺産ヴァンパイア/(C)まなべべ

なんか吹き出しのフレームも、悪魔のそれっぽいですけどっ!

どうも、神が言うには、我は天使に相応しくないほど思考が黒いといわれてな

 怪しい男は、顔に付いた血を拭きながらそう言った。

思考が黒い……?

うむ。破壊衝動というのか。それはもう自分をもいじめたくなるほどの

それ、ただのドMじゃない

どえむとは失礼だな。我は四大天使が一人、ウリエルぞ

ウリエル……確か地獄を管理していると言われる破壊の天使……

よく知っているのだな

いやまあ、中学二年生の頃ちょっとした病にかかりまして

我は堕天を免れるため……

……コホン。ではなく、神のお力になるため、黒きを破壊しにここへ来た

この世界には『黒歴史』とやらが蔓延しているそうじゃないか

はあ……

特に君。我は危険な匂いを嗅ぎ付けてここに現れたのだ。よし、君に決めたぞ。君を変えて進ぜよう

私はもう厨二病を卒業したの。関わらないでくださいっ

 ツンとそっぽを向く私。

君の黒歴史を消せると言ってもかい?

……!

それは……恥ずかしい過去をなかったことに出来るということ?

うむ。言ってみたまえ

じゃ、じゃあ! 今日の堀坂くんへの告白をなかったことにして!?

うむ、わかった。では、ここに

 ウリエルは、マントの中から箱を取り出した。

これは人間の歴史の一部を封印できる天界のアイテムである

この箱がいっぱいになるまでに誰か人間を幸せにしてみろとの宿題を出されたのだ

天使も宿題とかあるんだね……いくつ叶えたらいっぱいになるの?

内容にもよるようだが、この大きさなら結構いけるのではないかな。いっぱいが近づくと箱が光り出すのでわかるそうなのだ

そうなんだ! じゃ遠慮なく言っていいのね

さあ、願い賜え

 その言葉を聞いて、早速私は手を合わせ願う。

お願いします! 今日の告白を無かった事にっ!!

その黒歴史……消して進ぜよう

prologue『破壊の天使様』

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