お化け屋敷に行きたい

えー…
お化け屋敷って怖いじゃん。
お化け屋敷なんて面白くないよ。
そりゃ、君は怖がりじゃないから、そういうの平気なんだろうけどさ

何を言っているんだ君は。
私は十分に怖がりだぞ?

えー、だって怖がりな人がわざわざお化け屋敷になんて行かないでしょう?

何言っているんだ。
お化け屋敷に行って、何も怖くなかったら何一つだって面白くないじゃないか。
怖いという気持ちになるために私はお化け屋敷に行きたいんだ。

なんでわざわざ怖がりたいのさ

君は『面白い』っていうモノはなんだと思う?

んー、笑えたりとかウキウキしたりとか…。

そうだな。それも面白いの一つだと思う。
だけど、それだけじゃないと私は思うんだ。

面白いというのは感情が動かされること、それ自体にあるんじゃないだろうか。

楽しい、可笑しい、感動、恐怖、怒り、悲しい、それだけじゃなくて全ての感情をどれだけ元の状態から動かされたかが『面白い』の指標だと思うんだ。

そうじゃなければ、シェイクスピアの悲劇やスティーブン・キングのホラーがこれほど人に好かれるなんておかしいじゃないか。

感情がどれだけ動かされたか…。
そんな風に考えたことなかったなぁ

でも言われてみればそう思えてきた。
さすが僕の彼女だ。

でも、それなら別に恐怖じゃなくて他の感情でも良くない?

だから、動いた感情の距離が「どれだけ面白いか」ってことになるんだって言ってるだろ?

君のそばに居る私から、一番遠い感情がそこなんだ。

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