先生

人に聞かれたくない話は車の中でってことね。
盗聴器とか探さなくていいの?

勇者

そんなものないでしょう?

先生

どうして?

勇者

知らない人に仕掛けられていたのなら紅か魔女様なら気付くはずですし、紅か魔女様が仕掛けることはないですからね

先生

何で?

勇者

そんなものなくても聞く気になれば話を聞けますよね?

先生

そうね

勇者

魔女様への連絡も完全に断ってください。盗み聞きさせるのは許さないです

先生

はいはい、分かってますよ。大丈夫だって

勇者

……

先生

信用されてないね。いいよ、もし盗み聞きさせてるようならアキのこと殺していい

勇者

……分かりました。信じます

先生

そりゃどうも

勇者

紅は…施設のことは知っていますよね?

先生

ああ

勇者

すべてを語ると長くなりますので、必要な部分だけ話しますが…

先生

うん

勇者

ビアンカは……『成功例』です

先生

……

勇者

大賢者様が当初想定していた『組み立てて作られたもの』ではなく、別の過程での成功例ですが……

勇者

紅は…魔女様についてどこまで知っていますか?

先生

……会う前のことは知らない。が、会ってからなら全部知ってる

勇者

質問が抽象的でしたね。
魔女様が『何者』なのか?というのはご存知ですか?

先生

サウスの元精霊

勇者

……やっぱりご存知だったんですね

先生

まぁ…一応は

勇者

ご本人はそれを知らない、と

先生

多分ね。
それで?

勇者

大賢者様の調べによりますと、ビアンカは…サウスの精霊であった魔女様の魔力によって誕生したようです

先生

……

勇者

『作られた器』ではなく、『器として最適』だと思われる人物として選ばれ、ただの人間から別のモノへ変わったんです

先生

別のモノ…?

勇者

ヒトでも精霊でもない…中途半端な出来損ないです

先生

……

勇者

私もビアンカの過去は詳しくは知りません。
ですが、初めて会ったとき……彼女は人を酷く嫌っていました

先生

見た目人間だし、人間として生きたかったが……人は異質なものを嫌うから…ってことだろうね

勇者

……

先生

元々人間だったってんなら妖精や精霊も仲間として受け入れてくれないだろうし…どうやって生きてたんだろうね?

勇者

……それは…私には分かりません

先生

そっか

勇者

ただ、大賢者様が調べたところ…彼女はアードルゲという人物の娘であることが分かりました

先生

アードルゲ…?

勇者

……

勇者

昔の人物なので本人はとっくに死んでいますが、子孫に会って引き取ってもらおうとしたんですけど……

先生

断られたのか

勇者

はい

先生

まぁ当然と言えば当然だろうな。そんな昔の人物…しかもまだ生きてるとか気持ち悪がるだろうし

勇者

……

先生

どこで会った?

勇者

昔使われていたと思われる施設の地下です

先生

……ふーん

勇者

それで、大賢者様と相談して私が引き取りました

先生

何でヴァイゼが引き取らなかったんだ?

勇者

懐く…とまではいきませんが、私のほうが抵抗感が少なかったようですので…

先生

なるほど

勇者

猫の姿にした理由は密偵等に適しているということもありますが、人に可愛がられるからという理由もあります

先生

犬じゃダメだったのか?

勇者

密偵には若干不向きですし、『噛みつかれると危険』と嫌う人もいますので

先生

猫だって引っ掻くじゃん

勇者

殺傷力は犬ほど強くはないです

先生

犬は人を殺せるもんな…

勇者

それで、少しでも…少しずつでも人に慣れさせていったんです

先生

今でも先生に懐いてくれないけどねー

勇者

猫とはそういうものです

先生

いや、猫だけど猫じゃないじゃん!

先生

正直言うとね、ビアンカの元の姿見たときちょっとムラッとした

勇者

……は?

先生

今まで先生初見さんにあんなこと言ったことないよ?

勇者

……そういえば、何か口走ってましたね

先生

あいつと同じニオイを嗅ぎ取っちゃったんだねきっと。先生鼻いいんだね!

勇者

そうですか…

先生

大丈夫だよ。先生浮気する気ないから

勇者

そうですか……

先生

……それで?黒猫のほうは?

勇者

ネラは施設とは関係ないですね。偶然会って、ビアンカのことが気になって仕方がなかったようなので仲間にしました

先生

そうなの…

勇者

四精霊ではありませんが、力の強い精霊です

先生

猫になるのには反対されなかったの?

勇者

ビアンカと同じでいいと自分から言ってきましたよ

先生

鼻がいいんだねーネラっちも

勇者

……

先生

ネラは人の姿になるのか?

勇者

はい。四精霊でなくとも人の姿になれるのは驚きでした

先生

吹聴は?

勇者

してません。知っているのは大賢者様を含む口の堅い一部の人間だけです。
そんなことをしたら人間は同じことを何度だって繰り返しますよ

先生

そうだな

勇者

……紅は…魔女様に話す気はないんですか…?

先生

実はお前はサウスの精霊だったんだよって?絶対言わないよ

先生

あいつはオレのもんだ。
すぐ代えが出てくるのにわざわざ言って帰すことなんてしねーよ

勇者

今でも…?

先生

今言ってもしょうがねーことじゃん。なら別に言う必要ない。あいつはオレの嫁で、カズの母親。それだけでいい

勇者

……

先生

っていうオレの意思を汲んでくれて、こうやって野郎二人でドライブデートなんてしてるわけだろ?

勇者

……そうですね

先生

それについては感謝する。勇斗くんなら多分そのままゲロってただろうしね

勇者

天のことを悪く言うと殺しますよ?

先生

お前がオレに攻撃する前にオレがお前の首捻って終わりだこの野郎

勇者

……

先生

そもそも運転中にそんな危ないことしようとしないでね?先生ゴールド免許だから事故とか起こして色変わっちゃうのイヤだし。
安全運転安全運転♪

勇者

安全運転したまま私のこと平然と殺せるくせに…

先生

まぁねー♪

勇者

……

先生

話はもう終わり?

勇者

そうですね、だいたいは…

先生

じゃあ帰ろうか。野郎と二人っきりとかむさ苦しくてしょうがねぇ

勇者

……一つだけ、聞いていいですか?

先生

何?

勇者

ビアンカのこと…もしかして心当たりが何かあったりしませんか?

先生

……何でそう思う?

勇者

アードルゲという名を聞いたときの紅に…何か違和感を感じました

先生

ああ…ニュータイプ的なあれね……

勇者

ニュータイプ?

先生

アードルゲの娘を探してる時あいつに会っただけ。ビアンカのことは知らんよ

勇者

……

先生

こんなところで探し人を見つけても…今更だしな

勇者

……そう、ですか…

先生

ちょっとコンビニ寄ってアイスでも買ってく?

勇者

家に大量にありますよね!?

先生

買い食いするのがいいんじゃないの~♪

勇者

……

つづく

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