鈴石茜

さて……一夜経ったわけだけど……

鈴石茜

やっぱ昨日のは吊り橋効果とかそんな感じで

鈴石茜

恋かも‥…とか思ったのは気のせいだよね

佐島亮

こんにちはー

鈴石茜

うわっ

佐島亮

なんですか? 大声出して

佐島亮

また人様には見せられない漫画でも読んでたんですか?

鈴石茜

し、失礼な!
そんなわけないでしょ

佐島亮

あー、はいはい、そうですか

鈴石茜

なにその適当な返事

佐島亮

ま、我が高校の偉大な生徒会長様が二次元の美少女に興奮する変態のわけがないですからね

鈴石茜

…………

佐島亮

そうだ、これ、どうぞ

鈴石茜

ん……あれ? これって

佐島亮

鈴石さんが前見たいって言ってたアニメのDVDですよ

鈴石茜

おお! 狐草紙!! しかも初回限定版!?

佐島亮

特典は渡しませんよ?

鈴石茜

し、知ってるよ。で、でもこれ脚本とかも載ってるんだ……すごい……

佐島亮

まあまあ、そう興奮しないでください

鈴石茜

だ、だから興奮とか言うな!

鈴石茜

でも楽しみだなあ……パッケージの狐ちゃん可愛いっ

佐島亮

お、鈴石さんも狐ちゃん派ですか? 気が合いますね

鈴石茜

いや、本命は闇使いの雫ちゃんかな。やっぱ暗い過去持ちのやみっ子最強でしょ

佐島亮

そうですか。気が合いませんでした

鈴石茜

ま、まあ狐ちゃんも好きだよ。主人公に忠実なロリっ子という位置づけがもう、ね

佐島亮

ですよねー。やっぱり狐ちゃんは正義です

鈴石茜

はいはい、正義ねー

鈴石茜

二次元が正義とか常識を疑うー

佐島亮

失礼ですね。二次元が正義じゃないです。狐ちゃんが正義なんです。

鈴石茜

はーぁ

佐島亮

なんですかその溜息。まあとにかく今回の活動をしませんか

鈴石茜

あー……

佐島亮

どうしました?

鈴石茜

今日、やることないや

佐島亮

えー

鈴石茜

大体、今日は活動あるなんて一言も言ってないでしょ

佐島亮

だって、生徒会室に電気がついていたからてっきり活動があるものだと

鈴石茜

それは残念でしたー

佐島亮

全く、酷いですね

鈴石茜

勝手に勘違いして来る方が悪い

佐島亮

じゃあ鈴石先輩はここでなにをしていたんですか?

鈴石茜

あー……書類整理とかその辺。今まで雑にファイルに押し込んでたからさ、種類分けしておこうと思って。

鈴石茜

もう終わったけど。

佐島亮

ほんと僕は来ただけ損じゃないですか

鈴石茜

大丈夫、私にDVDを渡すという重大任務を果たせた

佐島亮

壊さないでくださいねー

鈴石茜

ぜ、善処する

佐島亮

心配を煽るようなこと言わないでください

鈴石茜

まあ、今日は勘違いさせてごめんね

佐島亮

…………

鈴石茜

何?

佐島亮

いや、今謝るところでした?

鈴石茜

え、いや、まあ。悪かったなーって

佐島亮

鈴石さんって変なところで律儀ですね

佐島亮

僕が逆の立場だったら嘲笑っておしまいですよ

佐島亮

大体活動日でもないのに生徒会室来て作業しているとか真面目です

鈴石茜

そう……?

佐島亮

そうです

鈴石茜

私はやるべきことをやっているだけなんだけどな

佐島亮

ほんと、尊敬しますよー。僕なんてやる気0ですから

鈴石茜

いやいや、他の役員よりも十分活動に参加してくれているからね?

佐島亮

まあ……一応役員ですから

佐島亮

そういえば、鈴石先輩はどうして生徒会長になったんですか?

鈴石茜

先生の推薦。誰もやる人がいないからお前やらないかって誘われたら断れなくてさ

鈴石茜

ま、他に部活動に入ってるわけでもなかったしね

佐島亮

あー、僕も一緒です

佐島亮

二年の内に経験つんでおけって……絶対来年生徒会長にするつもりですよ

鈴石茜

まあ、そんなもんだよね

佐島亮

それにしても、鈴石先輩は真面目に仕事していますね

鈴石茜

え、そう?

佐島亮

そうですよ、活動日じゃないのに仕事して

鈴石茜

それは……

鈴石茜

えっと……その……な、成り行きで?

佐島亮

鈴石茜

…………

鈴石茜

あはは、そろそろ帰ろうか

佐島亮

なんか誤魔化してます?

鈴石茜

そんなことないよー

鈴石茜

じゃ、また明日

佐島亮

明日はちゃんと活動あるんですか?

鈴石茜

多分ね

鈴石茜

なんかあったらメールで連絡するし

佐島亮

りょーかいです

鈴石茜

あのさ……

鈴石茜

時折ね、私生徒会長に向いていないんじゃないかって思う時があるんだよね

佐島亮

どうしたんですか? 突然

鈴石茜

いや、さっきどうして生徒会長やっているのかって聞かれたときいろいろ考えちゃって

佐島亮

僕は適任だと思うんですけどね

佐島亮

鈴石先輩は真面目で律儀で、僕は到底真似できないすごい人なんですから

鈴石茜

や、やけに褒めるね

鈴石茜

ちゃ、ちゃんとできてるならいいんだ……

佐島亮

……? なんかあったんですか?

鈴石茜

まあ……いろいろあって

鈴石茜

言えるわけないけど

佐島亮

ま、向いているか向いてないかなんてくよくよ考えたって分かりませんよ

佐島亮

僕が保証しますよ。鈴石先輩は誰よりも生徒会長らしいって

鈴石茜

あ……ありがとう

鈴石茜

て、てか今日はなんでそんな褒めるの?

佐島亮

うーん

佐島亮

僕はほんと思ったことしか言わないので

佐島亮

てきとーです

鈴石茜

な、なんだと

佐島亮

で、でも本心ってことですから

鈴石茜

そうですかー

佐島亮

ほんとです。僕は後先考えず発言しますけど、嘘はあんまり吐きません

佐島亮

だから、大丈夫です

鈴石茜

……そう

佐島亮

そうですよー

佐島亮

では、また明日

鈴石茜

う、うん

佐島亮

あ、DVD忘れないでくださいよ!

鈴石茜

分かってるよ!

佐島亮

あと……

鈴石茜

何!?

佐島亮

なんかあったら言ってください。僕でよければなんでも話聞くんで

鈴石茜

……!?

佐島亮

じゃ。

鈴石茜

う、うん

鈴石茜

な、なにそれ……

鈴石茜

どうして今日はそんな優しいんだよ

鈴石茜

なんか恥ずかしくて、変な感じ

鈴石茜

なんでも話聞くから……って。そういうの言われるの初めてだな……

だって私は……

ほんと、何にもできないんだから

役立たず

効率悪すぎ

分かってる。分かってるよ。私は効率が悪くていつだってみんなの足を引っ張る。

だったら、人よりも頑張ればいいんだ。そうすれば認めてもらえて……

鈴石は一人で何でもできて偉いな

鈴石さんは私たちの手助けなんていらないんでしょ?

じゃ、頑張ってー

待って! そうじゃない。私はただ……

私はただ……


認めて欲しくて

鈴石茜

でもやっぱ……現実に目をむけるのはできないや

鈴石茜

わ、私には私を癒してくれる二次元の美少女たちがいるし……

鈴石茜

だから今更優しくされたいとか……

思ってないのに

鈴石さんは現実と二次元の狭間で揺れる。

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