だって私は……
さて……一夜経ったわけだけど……
やっぱ昨日のは吊り橋効果とかそんな感じで
恋かも‥…とか思ったのは気のせいだよね
こんにちはー
うわっ
なんですか? 大声出して
また人様には見せられない漫画でも読んでたんですか?
し、失礼な!
そんなわけないでしょ
あー、はいはい、そうですか
なにその適当な返事
ま、我が高校の偉大な生徒会長様が二次元の美少女に興奮する変態のわけがないですからね
…………
そうだ、これ、どうぞ
ん……あれ? これって
鈴石さんが前見たいって言ってたアニメのDVDですよ
おお! 狐草紙!! しかも初回限定版!?
特典は渡しませんよ?
し、知ってるよ。で、でもこれ脚本とかも載ってるんだ……すごい……
まあまあ、そう興奮しないでください
だ、だから興奮とか言うな!
でも楽しみだなあ……パッケージの狐ちゃん可愛いっ
お、鈴石さんも狐ちゃん派ですか? 気が合いますね
いや、本命は闇使いの雫ちゃんかな。やっぱ暗い過去持ちのやみっ子最強でしょ
そうですか。気が合いませんでした
ま、まあ狐ちゃんも好きだよ。主人公に忠実なロリっ子という位置づけがもう、ね
ですよねー。やっぱり狐ちゃんは正義です
はいはい、正義ねー
二次元が正義とか常識を疑うー
失礼ですね。二次元が正義じゃないです。狐ちゃんが正義なんです。
はーぁ
なんですかその溜息。まあとにかく今回の活動をしませんか
あー……
どうしました?
今日、やることないや
えー
大体、今日は活動あるなんて一言も言ってないでしょ
だって、生徒会室に電気がついていたからてっきり活動があるものだと
それは残念でしたー
全く、酷いですね
勝手に勘違いして来る方が悪い
じゃあ鈴石先輩はここでなにをしていたんですか?
あー……書類整理とかその辺。今まで雑にファイルに押し込んでたからさ、種類分けしておこうと思って。
もう終わったけど。
ほんと僕は来ただけ損じゃないですか
大丈夫、私にDVDを渡すという重大任務を果たせた
壊さないでくださいねー
ぜ、善処する
心配を煽るようなこと言わないでください
まあ、今日は勘違いさせてごめんね
…………
何?
いや、今謝るところでした?
え、いや、まあ。悪かったなーって
鈴石さんって変なところで律儀ですね
僕が逆の立場だったら嘲笑っておしまいですよ
大体活動日でもないのに生徒会室来て作業しているとか真面目です
そう……?
そうです
私はやるべきことをやっているだけなんだけどな
ほんと、尊敬しますよー。僕なんてやる気0ですから
いやいや、他の役員よりも十分活動に参加してくれているからね?
まあ……一応役員ですから
そういえば、鈴石先輩はどうして生徒会長になったんですか?
先生の推薦。誰もやる人がいないからお前やらないかって誘われたら断れなくてさ
ま、他に部活動に入ってるわけでもなかったしね
あー、僕も一緒です
二年の内に経験つんでおけって……絶対来年生徒会長にするつもりですよ
まあ、そんなもんだよね
それにしても、鈴石先輩は真面目に仕事していますね
え、そう?
そうですよ、活動日じゃないのに仕事して
それは……
えっと……その……な、成り行きで?
?
…………
あはは、そろそろ帰ろうか
なんか誤魔化してます?
そんなことないよー
じゃ、また明日
明日はちゃんと活動あるんですか?
多分ね
なんかあったらメールで連絡するし
りょーかいです
あのさ……
時折ね、私生徒会長に向いていないんじゃないかって思う時があるんだよね
どうしたんですか? 突然
いや、さっきどうして生徒会長やっているのかって聞かれたときいろいろ考えちゃって
僕は適任だと思うんですけどね
鈴石先輩は真面目で律儀で、僕は到底真似できないすごい人なんですから
や、やけに褒めるね
ちゃ、ちゃんとできてるならいいんだ……
……? なんかあったんですか?
まあ……いろいろあって
言えるわけないけど
ま、向いているか向いてないかなんてくよくよ考えたって分かりませんよ
僕が保証しますよ。鈴石先輩は誰よりも生徒会長らしいって
あ……ありがとう
て、てか今日はなんでそんな褒めるの?
うーん
僕はほんと思ったことしか言わないので
てきとーです
な、なんだと
で、でも本心ってことですから
そうですかー
ほんとです。僕は後先考えず発言しますけど、嘘はあんまり吐きません
だから、大丈夫です
……そう
そうですよー
では、また明日
う、うん
あ、DVD忘れないでくださいよ!
分かってるよ!
あと……
何!?
なんかあったら言ってください。僕でよければなんでも話聞くんで
……!?
じゃ。
う、うん
な、なにそれ……
どうして今日はそんな優しいんだよ
なんか恥ずかしくて、変な感じ
なんでも話聞くから……って。そういうの言われるの初めてだな……
だって私は……
ほんと、何にもできないんだから
役立たず
効率悪すぎ
分かってる。分かってるよ。私は効率が悪くていつだってみんなの足を引っ張る。
だったら、人よりも頑張ればいいんだ。そうすれば認めてもらえて……
鈴石は一人で何でもできて偉いな
鈴石さんは私たちの手助けなんていらないんでしょ?
じゃ、頑張ってー
待って! そうじゃない。私はただ……
私はただ……
認めて欲しくて
でもやっぱ……現実に目をむけるのはできないや
わ、私には私を癒してくれる二次元の美少女たちがいるし……
だから今更優しくされたいとか……
思ってないのに
鈴石さんは現実と二次元の狭間で揺れる。