アキ

カズ。入っていいですか?

アキ

……

アキ

入りますね

和真

……

アキ

少しお話をしましょう

和真

ドアぶっ飛ばして平然としないでください!

アキ

ドアなら直せばいいだけのことです

和真

……

アキ

言いたいことでも聞きたいことでも、何でもどうぞ

和真

……お母さんは、どう思いますか?

アキ

何がですか?

和真

ボクのこと…置いていきますか?

アキ

私なら置いていきますね

和真

……

アキ

カズのことは大切に思っていますが、あなたとあなたのお父様のどちらかを選べと言われたら、迷うことなくお父様を選びますので

和真

……

アキ

ですが、お父様なら絶対そんなことはしませんよ

和真

……何で言い切れるんですか?

アキ

あの人は私とカズのどちらかではなく、両方選ぶ人ですから

和真

……

アキ

普段の言動からは信じられないかもしれませんけどね。
あの人は昔から…不特定多数を守るのではなく、特定の誰かを守るほうが得意だったのですよ?

和真

……それ…お母さんのこと…?

アキ

そうですね

和真

……

アキ

何もしていないのに…石を投げられたことがありますか?

和真

……ないです

アキ

関わったこともない人に、お前は平然と人を殺せるんだろ?と陰口を言われたことはありますか?

和真

……

アキ

助けた人に…怖がられ逃げられたことはありますか?

和真

……ない、です…

アキ

事実が噂として誇張され、人は歪んだ話を信じ込み思い込む……。
これが本人にとってどれだけ辛いか…あなたには分かりますか?

和真

……

アキ

私はよく分かりません

和真

分かんないんですか!?

アキ

あの人の声以外はただの雑音だと思っていましたからね

和真

……それもどうかと…

アキ

普段は気にしていない素振りをしていましたが…それでも蓄積されたものがあったのでしょうね。弱音を時折こぼしていましたよ

和真

……

アキ

だからあなたも…お父様の上っ面ではなく、心を見るようにしてください。
心の守備力はMAXまで上げていますけどね

和真

心の守備力って何ですか!?

アキ

本当は優しくて繊細で傷付きやすいのを隠すために必死、ということですよ

和真

何でそんなことするんですか?

アキ

さあ?男のプライドみたいなものかもしれませんが、私には分かりません

和真

結局父さんはどうしていたと思いますか?

アキ

向こうに残ったと思います。
ですが、誰も来ないような場所で三人ひっそり隠れるように暮らすか…もしくはあなたにはお父様なんていないと嘘をついて二人でゆっくり過ごすかでしょうね

和真

……普通には…暮らせない…?

アキ

紅の勇者ですからね。無理だと思います

和真

……

アキ

お父様がああやってバカなことをしながら、三人で普通に暮らせるのは…こちらの世界だからこそなのですよ?

和真

父さんは…向こうが嫌いなの?

アキ

いいえ。自分が生まれ育った世界です。嫌いではないですよ。
帰りたいとは思っていないようですが

和真

……みんなから怖がられても…父さんは何で戦ってたの?

アキ

それは知りません。私はあの人にただ付いていっただけですから

和真

……

アキ

あなたが直接お父様に聞くのがいいでしょう。素直に答えてくれるとは思えませんが

和真

心の守備力?

アキ

そうかもしれません

和真

……言ってて恥ずかしくないですか?

アキ

いいえ、全然

和真

……

先生

オレは恥ずかしい

勇者

勇斗

どうしたんですか?突然…

先生

いや…ちょっと盗み聞きを…

勇斗

またですか…

勇者

また?

勇斗

先生とアキさんは以前魂で繋がっていたという話はヴァイゼから聞いたか?

勇者

はい

勇斗

アキさんの身体を取り戻しても、繋がっていた期間が長くて混ざり合った部分がどうしても綺麗に分離できなかったらしくてな…

先生

離れてても同調すれば何となく向こうの状況が分かるの

勇者

……どんなチートなんですかそれ…

勇斗

アキさんが身体を置いて魂だけ抜けてきても、真っ直ぐ先生の元へ来れるのはそのおかげなんですよね?

先生

浮気もできやしねぇ

勇斗

そんな気まったくありませんよね?

勇者

どうやってするんですか?

先生

浮気?

勇者

違います!魂の同調ってやつです!

先生

んー?なんかこう…う~んって集中すんの

勇者

全然分からないんですけど…

勇斗

先生は感覚派だから…

勇者

まったく説明できないくらいの感覚派って厄介ですね…

勇斗

それで…カズは……?

先生

とりあえず落ち着いてるっぽいから大丈夫じゃね?

勇者

チートか…これが本物のチートというやつか…

勇斗

先生。聞いていいですか?

先生

何?

勇斗

カズの言っていたことなんですが…

先生

あいつが向こう出身ならどうしたかって話?

勇斗

はい

先生

とりあえず何とか三人でこっち来れる方法ないかは探すかもしれんけど、どうしてもダメなら残るよ

勇斗

……

勇者

魔女様はでも一度…

先生

あいつを置いてくなら残ってもいいとは思ったよ?でもその前にあいつが話を進めちゃってオレの話最後まで聞かないで勝手にああしちゃったんだもん…しょうがねーだろ

勇斗

…そうだったんですか

先生

身体はなくても一緒にいてくれるんならそれでもいいかって諦めたし…身体がないのならオレより先に逝くこともないだろうってさ……満足してたはずだったんだけど…

勇斗

……アキさんの身体を取り戻したことに後悔をしているわけではないですよね…?

先生

一緒に歳取ってくのもいいもんだよ。
オレよりだいぶ若くなっちまったけど…

勇者

魔女様って大賢者様がいたときより老けたんですか?

先生

お前失礼だねw

勇者

十分若く見えるので…

先生

子供っぽい時期ではないし、おばさんっていうほどの歳じゃねーし、まあ一番綺麗な時期だから見た目はあんま変化はないかもな

勇斗

先生も変わりないですよね

先生

歳取ってくると男の見た目って数年でそんな劇的変化はないもんよ。中年太りと禿げさえしなけりゃ…

勇者

魔女様のことはやっぱり綺麗だと思ってるんですか?

先生

当たり前じゃん

勇者

さらっと言った!

勇斗

平然とノロケるところは変わったな…

先生

ん?何?

つづく

pagetop