矛盾とは
相容れない二つの存在のこと

一つが存在すれば
もう一つは存在しない

仮に二つが存在するのであれば
その世界は存在しない

世界は多くの色で溢れている。
三者三様、十人十色。
同じ姿の者がいなければ、
同じ考えをする者も唯の独りもいない。

そんな世界に、特別な2人の王がいた。

何もかもを染めてしまう白の王

白の王

このワインはおいしい

何にも染められない黒の王

黒の王

このワインはまずい

白の王は孤独だった。
周りは皆、自分と同じになってしまう。

白の王

皆自分と同じならば
独りでいるのと何が違うのだろう

故に孤独。
白の王は誰かと共にいることなど出来はしない。

黒の王もまた孤独だった。
何にも染められないということは、
誰の影響も受けないということ。
変わらないということ。

黒の王

俺はいったい何者なんだろう

自問自答するも、
その答えをくれるものなどいやしない。
黒の王は何者にも染められない。
掛けられる言葉などに左右されたりしない。

白の王は自分を否定する者を求めていた。


黒の王は自分を変える者を求めていた。


しかしそれは叶わぬ願い。

2人が共に存在することなど出来ないのだから。

白の王

というのを考えたんだけど
どうだろう?

黒の王

つまらん

白の王

えー?
そうかな?

黒の王

矛盾とは言葉だけの存在だろう
実の物として存在しないものだ

白の王

確かにね
現実に矛盾する存在はありえない

黒の王

ただの言葉遊びだ

白の王

私はそこに面白さがあると思うんだけどね

白の王

あ、このワインおいしい

黒の王

何を言ってる
まずいだろ、このワインは

白の王

む……

黒の王

……………………

白の王

私がおいしいと言ったらおいしい

黒の王

俺はどんなものにも流されないぞ?

白の王

これは矛盾しているね

黒の王

アホか

黒の王

ちょっとそのワイン飲ませろ
お前は俺のワインを飲め

白の王

別にいいけど?

白の王

あ……

黒の王

ほらな

白の王

このワインはまずいね

黒の王

このワインはうまい

黒の王

そもそも俺のワインとお前のワインは別物だろうが

白の王

知ってたさ
まあ、これも言葉遊びの一種だね

黒の王

……やはりつまらん

ちゃんちゃん

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