僕たちはデリンの近くに寄り、
転移魔法で魔王城へ向かうことにする。
いよいよ最後の決戦だ。
僕たちはデリンの近くに寄り、
転移魔法で魔王城へ向かうことにする。
いよいよ最後の決戦だ。
皆さん、どうかご無事で。
もっといい世界にしてくれると、
信じて待っています。
トーヤくん、また会おうね。
はいっ!
僕とトーヤくんは笑顔で握手をして離れた。
そして手を振りながら別れを惜しむ。
よし、準備はいいか?
…………。
僕たちの立つ地面に
大きな魔方陣が浮かび上がった。
周りは次第に光に囲まれ、
景色が揺らぎ始める。
程なく体が上下に引っ張られる感覚を覚え、
次の瞬間には周りの景色が変化していた。
着いたぞ。
正面に見えるのが魔王城だ。
ここが……魔王城……。
外見は一般的なお城と変わらない。
どうやら今いるのは中庭のようで、
近くには噴水や手入れされた草木が
植えられている。
前方にはお城の門が見えていて、
そこから中に入れそうな感じだ。
行くぞ、アレス! 遅れるなよ!
うんっ!
デリンを先頭に、
僕たちは城へ向かって走り出した。
僕の左右にはミリーとエレノアさんがいる。
その後ろからタックとシーラ、クリスくん。
最後尾を守るのはビセットさんだ。
それからすぐに相手側も
こちらの存在に気付いたのか、
複数の兵士が行く手に立ち塞がる。
止まれ!
そう言われて
止まるバカがいるかっ!
せいっ!
やぁっ!
襲いかかってくる兵士を
ミリーとエレノアさんが剣で弾き飛ばす。
どうやら彼らは特別な力を持っている
というわけではなさそうだ。
ただ、次第にその数が増えてきて
どうしても進む速度が遅くなってしまう。
さらに誰かが召喚したのか、
レッサーデーモンやアンデッドの姿も
見られるようになってくる。
ここは僕に任せろっ!
…………。
クリスくんは魔法の詠唱を始め、
手のひらに白い炎の塊を作り出した。
その炎は膨れあがっていき、
それを見た兵士たちは
さすがにギョッとしながら怯んでいる。
破魔爆炎波ッ!
白い炎は四方八方へ飛び散っていった。
命中したレッサーデーモンやアンデッドは
その炎の中で灰と化す。
兵士たちも熱と炎によってダメージを受け、
のたうち回っている。
アレス様、
ここはボクに任せて先へ進め!
でもクリスくんだけを
残しては行けないよ!
私が残るわ。
エレノアさん……。
アレス様、
クリスさんは私が守ってみせる。
だからあなたは先へ。
アレス、
この場はエレノアたちに任せよう。
オイラたちは先へ進むんだ!
……大丈夫です。
私を信じてください。
エレノアさんは微笑みながら
僕を見つめていた。
クリスくんも小さく頷いている。
そうだ、2人は僕のために
決死の覚悟してくれているんだ。
その意思に報いるためにも、
ここで足止めを食っているわけにはいかない。
クリスくん、エレノアさん。
どうか無事でいて。
さぁ、行けっ!
後ろ髪を引かれつつも、
この場は2人に任せて
僕は先を急ぐことにした。
早く決着を付ければ、
2人が助かる可能性も高くなる。
だから一刻も早く、
魔王のところへ辿り着かなければならない。
その後も立ち塞がってくる兵士たちを
振り払いつつ、
僕たちは城内を突っ走っていった。
長い通路を真っ直ぐに進み、
さらに奥へと足を踏み入れる。
こ、ここから先へは行かせぬぞ!
うるさいっ!
ザコは下がっていろ!
俺は四天王のデリンだ!
それを分かっていて
刃向かう気かっ?
殺すぞっ!
ヒッ!
デリンの威圧する態度に怯え、
引き下がる魔族。
やはり四天王とそれ以外の魔族では、
実力差が相当あるんだろうな。
もちろん、
それでも立ち向かってくる魔族もいる。
中には魔法を放ってくるヤツもいたけど、
それはミリーさんとタックが対処していく。
っ!?
しばらくして、不意にデリンが足を止めた。
通路の前方には3人の魔族が立っている。
……こいつら、今までの魔族と雰囲気が違う。
威勢がいいな、デリン。
この裏切り者め。
近衛3人衆か……。
誰なの?
魔王の親衛隊みたいなものだ。
四天王に次ぐ実力を持っている。
アレス、お前は先へ進め。
ここをあと少し真っ直ぐ行けば
魔王の間だ。
もう俺が案内する必要はない。
でも……。
私も残ります。
さすがにデリンだけでは
苦戦するでしょうから。
私もお手伝いします。
相手が3人なら
こちらも3人でないと、
対処しきれないでしょうし。
ミリー、ビセットさん……。
よし、ここはお前らに任せるぞ。
アレス、シーラ、遅れるな!
う、うん……。
はいっ!
僕たちは一丸となって
近衛3人衆に突進していった。
デリンとミリーが前を切り開き、
できた隙間を僕とタック、シーラが突き進む。
そしてその場にはデリンたち3人が残る。
やがて通路の突き当たりに
荘厳な扉が見えてきた。
いよいよ魔王の間だ。
アレスとシーラは力を使って
ノーサスの動きを封じろ。
お前たちならきっとできる。
タックは走りながら、そう声をかけてくる。
それに対し、
僕とシーラは顔を見合わせて静かに頷いた。
シーラは緊張しているのか、
表情が強ばっている。
僕もそうなっているかもしれないけど……。
みんなにためにも僕は負けられない!
タックが扉を蹴破り、
僕たちは魔王の間へ足を踏み入れた。
そこには広大な空間が広がっていて、
奥の玉座に誰かが座っている。
特に反応することもなく、落ち着いた様子だ。
禍々しい気配がこちらまで漂ってきている。
底知れぬ力も感じられる。
今までに出会った相手とは
根本的に違う存在感。
思わず身震いしてしまい、自然と鳥肌が立つ。
それから程なく僕たちは玉座の前に辿り着き、
彼と対峙する。
ようこそ、勇者様。
お待ちしておりました。
おや、そちらには
見知った顔がありますね。
偉くなったもんだな、ノーサス。
やはりあなたは
賢者デタックル殿ですか。
ご無沙汰しておりました。
でももはや私の敵ではありません。
前魔王の力を手に入れ、
かつてとは
比べものにならないくらい
強くなりましたので。
自惚れんな、ボケッ!
オイラたちが力を合わせれば
倒せるんだよっ!
……ならば、
力を合わせられなくすればいい。
ノーサスの指先が光った。
そこから発せられた光が
タックの腹を貫通する。
――素速いタックでさえ、
避けられないほどの一瞬。
彼の瞳から輝きが消え、
そのまま床に倒れ込む。
……が……ふっ……。
タックぅううううううぅーっ!
はははははっ!
強くなりすぎたせいか、
力の加減がうまくできないのです。
お許しください。
タック様っ!
今すぐに回復魔法をかけますっ!
おっと、そうはさせません。
はぁっ!
きゃあああああぁっ!
ノーサスがシーラに対して気合いを向けると、
彼女は見えない力によって吹き飛ばされた。
これはミューリエも使っていた技だ……。
シーラは背中から壁に叩きつけられ、
そのまま床へと倒れ込む。
手足は動いているから
生きてはいるみたいだけど、
もはや戦える状態じゃない。
さぁ、勇者様。
残ったのはあなただけ。
どう戦いますか?
……どうしても戦わないと
ダメですか?
僕たちに争う理由なんて
ないじゃないですか。
私には平界を支配するという
目的があります。
そのためには
勇者であるあなたは邪魔。
排除しなければならない。
力ある者が世界を支配し、
力なき者は支配される。
当然のことでしょう。
私を説得したいなら、
私以上の力を示すことです。
そうすれば聞く耳くらいは
持つかもしれません。
くっ……。
やはり今の状態では
戦いを回避するのは不可能だ。
今の僕にできるのは、
僕なりの戦い方でノーサスを
打ち負かすことだけ。
僕は深呼吸をして心を落ち着かせ、
ノーサスに向かって念じ始める。
次回へ続く!