みんなの視線が、佐川さんに一斉に集まる。
午後7時48分
ふんっ!
懺悔でもなんでも
とっとと終わらせて帰るわよ!
さぁっ、それでは懺悔をいってみましょ~!
みんなの視線が、佐川さんに一斉に集まる。
……なによ……これ……
封筒から二つに折り畳まれた白い紙を取り出し、それを開いた途端に佐川さんの顔はみるみる青冷めていった。
佐川さん?
どうしましたの?
ふ、ふざけないでよ!
意味わかんないんだけど!!
さぁ、早く読み上げて下さいっ♪
佐川さんは俯き、ワナワナと震えていた。
イヤよ……
では、失格になりますが?
……なんで……こんな……
ふうり……
わかったわよ!
よ、読めばいいんでしょっ!?
佐川さんは、なんとか自分を落ち着かせようとしているみたいだ。
唇を噛みしめ、体の震えを必死に我慢しているように見える。
佐川 ふうり、私の罪。私の罪は他人の命を奪った事……。私は、自分の気に入らない人間を精神的に追い詰め、自ら死を選択させるように仕向けました……これでいいでしょ?
あれあれ~
まだ続きがあるはずですよ~?
……私の罪は……
人殺し……
ど……どういう事ですの?
ひっ、ひ、人殺しって……!?
はいは~いっ! 待ってました!
それでは皆様、スクリーンにご注目下さい♪
階段の白スクリーンには、またあの映像が流され始めた。
画用紙に描かれた背景とお人形が映され、子供向けの人形劇のようなナレーションが流れ出す。
昔、むかしあるところにとってもわがままな女王様がいました。
なによあの子、生意気だわ!
女王様の権力は絶対です!
少しでも気に入られなければ……
みんなで今日から無視よ!
あの子はこの国にはいない存在!!
わかったわね!?
その存在を消されてしまうのです。
そんなある日……
ねぇ、あの子……
親が学者だかなんだかしらないけど、ちょっとムカつくのよね……
女王様の一言で、一人の少女はその存在を消されてしまったのです……。
ね~、なんか臭くない?
女王様がそういえば
少女は真冬にバケツの水を掛けられ……
ね~この席いらないよね? いないんだから
女王様がそう言えば
少女の机と椅子はゴミ捨て場へ……
そして……
ね~、いつになったらさ~、アイツ死んでくれるのかな~?
女王様がそう言えば、少女は自らの命を……
ふ、ふざけないでよっ!!
違う! 違う違う違う!
私は殺してない!
アイツがアイツが勝手に飛び降りたのよ!!
佐川 ふうり、オマエは人殺しだよ~?
違うっ!! 私は……、そ、そうよアイツが全部悪いんだ!
藤堂かすみ! アイツがっ!!
藤堂かすみ……!?
やっぱり佐川さんは知っていたんだ、藤堂かすみの事。
かすみと私たちは1年の時、同じクラスだったのよ。
でも、アイツスゴい暗くて大人しかったからクラスでも浮いてて、だって、みんなウザいって言ってたのよ!?
私だけがなんで責められるのよ!?
…………
罪を裁くのはオマエじゃない、室井柚! さぁ、断罪を!
あ~、そうだったわね。
柚、ほら早く言ってやんなさいよ!
あ…………
ちょっと~、こんな時まで悩むとかアンタってほんとグズねっ!
あんただけじゃない……
……えっ?
室井さん?
アンタだけじゃないって言ったのよ!?
アンタのせいで、私までこんな事に巻き込まれたんじゃない!?
ゆ、柚、何言って……
アンタなんか友達でもなんでもないわよ! クラスのカースト上位だから付き合ってあげてただけ!
はぁっ!?
ちょっとヒトが大人しくしてればアンタ……おぼえてなさいよ!?
佐川さんはテーブルを強く両手で叩き、勢いよくその場で立ち上がる。
椅子がガタンと後ろに倒れた。
それでは室井様、佐川様に断罪を~♪
許されない……
……えっ!?
佐川ふうりの罪は許されない!
ブブ──────!!
不快なブザー音が部屋中に鳴り響く。
残念でした~っ! それでは許されなかった佐川さんは贖罪をしてもらいま~す♪
何よ!?
柚アンタ、あとでほんとヒドいからね!!
…………
ふんっ!
別にたいした罰ゲームじゃないんでしょ!?
とっとと終わらせなさいよ!!
わっかりました~♪
それではおっしゃる通り佐川様には一番早いのでいきましょう!
全く、くだらな……
恐らく、その時佐川さんはまだ言葉を続けようとしていたのだろう。
けれど、その言葉は途中で途切れて終わった。
何故なら──
私たちの目の前で彼女の上唇から上が、すーっと横にズレ落ちそのまま床へとゆっくり落下していったのだ。
きゃあああああああああああああああっ!!
いっ、いやあああああああああああ!!
皆、一斉に叫びだし部屋の中をにげまどう。
ゴトっという音と共に、佐川さんの体はテーブルへと倒れ込んだ。
彼女は死んだんですの……?
ほ、本当に、やっぱりほ、本当に殺される……
はいは~い、皆さん落ち着いて下さ~い!
こんな事、落ち着いてなんていられないわ!
ね、おねえちゃんどうなったの……?
見たらダメ……
白木さんは、手でくるみちゃんの視界を塞いでいた。
こんなこと……
贖罪ですのでしょうがありませんよ~♪
これは、ワイヤー……?
……えっ?
佐川さんであった体の上に、透明な何かから血が滴り落ちている。
そうで~す!
この部屋の至るところに贖罪の仕掛けがしてあるのですよ~♪
私は部屋を改めて、ぐるりと見渡してみた。
この部屋のどこにいてもどんな場所でも、殺す事は出来るんですよ~
贖罪の山羊……スケープゴート……
さぁ、それでは断罪を続けましょう!