五分後。
疲労困憊した二人は互いに息をつきながら話を続ける。
ゆきじ、ただいま参上いたしました!
早速ですが、
王女が行方不明になりました
……
……
ええええええええええええええっ
しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
五分後。
疲労困憊した二人は互いに息をつきながら話を続ける。
…で、貴方に……
頼みたいことが…あります
……な、なんでしょうか
"モモちゃん"を
探してきてください
"モモちゃん"、ですね。
わかりました!
あなたがこのワンダリア国で最も”見つける”能力に長けていると聞いています。どうか、王女のために、"モモちゃん"を、見つけてください。それから、この事は、くれぐれも内密に
無論です。獣耳二十四牙(けもみみにじゅうよんき)の名に懸けて、必ずや!!
頼みましたよ
……ん?
ゆきじが光とともに消えたあとで、スミスは大事なことを忘れている気がした。
そう。
ゆきじに王女を見つけてもらえばいいのだが、スミスは連日のごたごたで正確な判断が出来なくなっていた。もっとも他にも理由はあるのだが。
そしてその判断の誤りが、事態をさらに複雑にしていく。
一方、小屋では緊急会議が開かれていた。
どうやって帰るのかしらねぇ?
……
……
歩いて?
…そうね
お絹は考えながらウインナーにフォークを刺す。
…疲れるわね
……
……
会議は難航していた。
その時、静かな部屋にノック音が響く。
はい
とめ蔵が戸を開けると、見知らぬケモミミが立っていた。
すいません。こちらに"モモちゃん"は、いませんか?
…"モモちゃん"?
ああ、俺だけど
モモちゃんこと桃山タロウは、ウインナーを口に頬張ったまま素知らぬ顔で振り返った。
その場にいる誰もが思った。
……
……
ええッ!? モモちゃん!?
おまえが!!?
あ、私は…
ゆきじは名乗りかけて口ごもった。
内密に事を進めるのに、口実を何も考えていなかったのだ。黙っていては不審に思われるが、そう思うほどに焦って何も浮かばない。
そのう...
迎えにきてくれたんだろ?
…あ、はい!
ゆきじにとってはありがたいことに察しの良いモモちゃんは、自分たちの素性を告げることなくこの場を去れるよう、予め決められていたような言動をとった。
ごちそうさん
タロウは何食わぬ顔でナプキンをテーブルに置いて立ち上がると、荷物を肩に掛ける。
じゃ、行こうぜ
言うが早いか 、 2人は光の中に消えてしまった。
桃山タロウ、
只今参上いたしました!
ご苦労さま。来て早々で悪いが、聞きたいことがあるんだ
王はタロウの挨拶を片手で制し、いきなり本題に入る。
玉座に座ったまま前屈みになると、片膝を付くタロウの目を覗きこんで尋ねる。
ねぇねぇ、
羅針指(らしんし)、知らない?
羅針指、ですか?
……
タロウは少し考えて答える。
確か、第3地下倉庫の入り口から7列目、Gの棚の4-6にあったはずです。
タロウが消えたあと、とめ蔵はいつものように皿を洗って洗濯をし、お絹はとめ蔵に教わりながら二階の物干し場でそれを干していた。
これは?
とめ蔵のシャツを持ち上げて、お絹が尋ねるので、
それはハンガーにかけます
ハンガー?
『ハンガー』という言葉を知らないお絹は、それが何なのか、想像すらもできなかった。
ああ、ちょっと待ってて
これです
物干しの脇に掛けてあるハンガーをとって見せると、お絹はじいっとそれを見た。
生まれてから今まで、皿を洗ったことも洗濯をしたこともないお絹は、とめ蔵がスラスラとそれらをこなす様をみていて、羨ましくなっていた。
自分もやってみたい。
自然と、そう思えるようになっていたのだ。
……
えっと、
これを服に通して…
とめ蔵がハンガーの使い方をお絹にレクチャーしていると、玄関で大声が聞こえた。
すいませーん。お届けものでーす
はーい! 今行きまーす!
ちょっとやってみて
ええ
とめ蔵は、お絹に洗濯物を預けて一階に降りる。
玄関には郵便物を持った男が立っていた。
レイウェルさんっスか?
はい
アルバイトと思われるその男はとめ蔵が届け先と判明すると嬉しそうにサインを求めてきた。
確認にサイン、お願いしまーす
あざっしたぁー
(ありがとうございました)
ご苦労さまー
誰からだろうと宛名を見てとめ蔵の足が止まる。
......ん?
これって......
ラプンツェル宛てじゃん
アルバイター万次郎は、届け先を見事に間違えていた。
何があざしたーだ
あの野郎(怒)