恒久が間に入ってくれたお陰もあって、
俺と滝岡は頻繁に話すようになっていた。


　ふたりきりになるチャンスは、あまり無かった……が。
滝岡が、俺の顔と名前が一致するくらいには親しくなった。


　そうして７月も半ばに差し掛かった頃に、
窓の外を眺めながら滝岡が呟いた。

　やっぱり彼氏と過ごす気なんだろうか……。
でも、がっついていると思われるのも嫌だから、
俺は無言でイチゴオレをすすり続けた。


　すると、滝岡の友達の女子がこう言った。

　俺は飲んでいたイチゴオレを、
目の前の恒久に噴き掛けた。

　被害を受けた恒久より、
前を汚してしまった俺の制服を、
滝岡がハンカチで拭いてくれた。

　恒久には悪いが、ちょっと嬉しい……。
じゃ、なくてだな！


　つ、つまり滝岡は、彼氏がいないって事だよな？
高校生になって、初めての夏休み……。
イチかバチか、賭けてみるか？


　いやいや。
こんなに可愛い滝岡に彼氏がいないって事は、
相当理想が高いのかもしれない。


　つまり、俺なんかの出る幕は
無いという事であって……。

　恒久が唐突に、俺の前に大人のＤＶＤを突き出した。

　ひったくる様にしてＤＶＤを奪い取ると、恒久が

と、笑って肩をすくめた。

　ズイッと、急に恒久が顔を近づけてきた。

　恒久の唐突な言葉に、
俺の体中の血液が一瞬にして沸騰した。

　確かにその通りだが、
ここで認めてしまうと恒久に
敗北宣言をしたような感じになるから嫌だ。


　よしっ、ここは言い訳をしよう。

　俺は思わず恒久の言葉にいきり立ち、両拳を握った。

　そんな俺を、呆気に取られた様子で恒久が見ている。


　……シマッタ、やってしまった。

　告白だなんて簡単に言ってくれるけど……。
俺とお前は違うんだよ、恒久。


　そりゃあ恒久は、黙っていても女の方から寄ってくるし、
たまに恒久から動いて告白したり、
通りすがりの女の子をナンパしても成功率が100％だろうよ。


　だけど俺は違うんだ。
生まれてこの方、女に告白したり、
告白されたりした事なんて一度も無い。

　つ、恒久の野郎……。
スマホをいじり始めやがった。

『そうだけど』って言った！

つうか、お姉さんってなんだーっ！！


　そうだ。
家に帰ったら、前に菊田から聞いた呪術を使ってみよう。
そして、こう祈るんだ。

げしっ

　恒久に背中を蹴られた。

つづく