はいは~い♪
それではゲームは7時開始になりま~す
それまで少々ご歓談くださいませ~
次にこの曲が流れたらゲーム開始でーす

ちょっと! あなたね!!
まだ聞きたい事が……

佐川さんが声を荒げたが、テミと名乗った人物はその場から手品みたいに煙にまかれて消えてしまった。

一体、なんなのよ
あの女!!

ともかく、ゲームに参加しない事には帰してもらえなさそうね……

そんな……

早く帰らないと妹が…………

みんなそれぞれ、困惑した表情で何か考え込んでいる。

ワタクシは参加しますわ

えっ!? ほ、本気?

ええ、アノ藤堂誠一郎の遺産ですわよ? 
興味がないわけないですわ

……私も参加する

白木さん……

主催者の目的が私は知りたいから……

ふんっ!
参加するもなにもゲームをしなきゃ帰れないんでしょ? ならさっさとやって帰るわ!
柚、あんたどうするの?

わ、私は……

はあっ……
どうせまた自分じゃ決められないんでしょ? アタシが参加するんだから、アンタも参加! 意義なしよね?

……うっ、うん……

ちょっと、そんな無理に参加させる事ないんじゃ……

じゃあ、参加しないでここから出れる方法があるわけ?

それは……
でも、あの『生き残れれば』っていう言葉も気になるし……

あ~んなの脅しに決まってるじゃない
バっカみたい

あっ、あのあの、なぜ私たちなんでしょう?

何故?

だ、だって、そ、そんなゲームに参加させられるなんて、何か理由があるんじゃないんでしょうか……

理由なんてないんじゃない?
ただ無作為に選ばれただけ! みんな知り合いとかならともかく、私は柚しか知ってる人もいないし……

私も、ここにいる人たちで知っている人はいない……ただ……

ただ?

藤堂って名前には覚えがあるの……

有名な科学者だもの、当然じゃなくて?

そうじゃない……そうじゃないんだ……

【藤堂】そう、私は知っている。覚えてる。


この名前を……【藤堂かすみ】を……。



遠い記憶の中で、今までどうして忘れていたのかすら思い出せないけど……。

昔、藤堂かすみっていう友達がいたんだ……

…………!?

白木さん?

なんでもない……

藤堂かすみ……

佐川さんは明らかに動揺していた。

知ってるの?

し、知らないわよ! そんな子、ねっ!? 柚!?

うっ、うん……

ワタクシは知らないわよそんな方

あっ、わ、私も知らないです!

わかんない……

三人は本当に知らないみたい。


だけど、佐川さんたちは何か知っているようにも見えるし、白木さんも様子がおかしい。



やっぱり、藤堂かすみが何か関係しているのかも?

それから、みんな無言だった。



お互いに何か疑いをかけるようなそんな雰囲気でいた。

あの……
さっきはかばってくれてありがとう……

ふと目が合った室井さんが、側に来てこそっと私にお礼を言う。

えっ? ううん、私は何も……

彼女、随分強引な人みたいね

私の側にいた白木さんが立ち上がり、奥の階段に座り込む佐川さんを一瞥した。

私がはっきりしないのが、いけないんだ……

ちょっと! 柚! 何してんのよっ!?
こっちに来なさい!!

まるで女王様ね……

佐川さんの方に急いで掛けていく室井さんを見て、私も白木さんの言った事と同じ事を思っていた。

ママ……

だ、大丈夫だよ? すぐママに会えるから、ねっ!

小森さんは、くるみちゃんにつきっきりだ。


さっき、小森さんは妹さんがいるって言ってたから、妹さんとくるみちゃんに重なるものがあるのかもしれない。

小森さん、妹さんんがいるんだよね?

あっ、うっ、うん……
妹、くるみちゃんと同じくらいだから……なんかほっとけなくて……
ウチお父さんがいなくて、お母さんが遅くまで働いているから妹の面倒は私が見てるんだ……

そっか、じゃあ早く帰ってあげないと妹さん心配しちゃうね……

うん……
ね、ねぇ、島崎さんはどうするの? 
ゲーム……

う~ん……
他に帰れる方法があれば出来れば参加したくないんだけど……

無いみたい……だよね……

テミって人、参加は絶対だって言ってたものね……

あ、あれは、本当なのかな……?

アレ?

お、お金が、もらえるって……

言ってたの……

さ、さぁ? どうだろう?

本当にお金がもらえるなら、わ、私も参加したい……かも……

おねえちゃんがやるなら、くるみも!

うん、一緒にやろう!

これでゲームに参加表明したのは、私と室井さん以外の全員だ。

といっても、室井さんは佐川さんに言われれば参加せざるおえないだろうし、結局私以外の全員がゲームへの参加を承諾した事になる。

あなたはどうするの?

うん…………

ゲームに参加しなくても帰れる方法があるのなら、私は参加したくはない。

けどその方法もわからないし、参加は絶対だとテミは言っていた。

もし、それでもゲームへの参加を拒否したらどうなるんだろう?

参加しないなんて選択肢はもともと無いんじゃないのだろうか?



やはり、私にはアノ言葉が引っかかる。


生き残れれば……

午後7時

夕やけこやけで~♪ 日が暮れて~……

またアノ音楽だ。


それと共に、今度は部屋の中にまばゆい閃光が走る。
まるで、何かのショーでもはじまるみたい……。

はいは~い!
それでは~おまたせしました~!
みなさん覚悟は決まりましたか~?

相変わらずのハイテンションで、テミはスポットライトを浴びながら現れた。

まさに、神出鬼没といったところだろう。

早くしなさいよ!
とっとと終わらせて帰るんだから!

そうね、わたくしもヒマではないから早々にはじめてちょうだい?

みなさんヤル気満々ですね~!
それではゲームの説明をする前に、念のため確認をさせて頂きたいのですが~?

確認?

は~い!みなさん、このゲームに参加するということでよろしいですか?

よろしいも何も、ゲームの参加は絶対ってアンタが言ったんじゃないのよ!?

そうですよ~?
でも~もしかしたら~、ど~しても参加したくないって方もいらっしゃるんじゃないのかな~……って……

参加しなかったらどうなるの?

は~い! ゲームを辞退されるという事は
この場でゲームオーバーとなりま~すっ!!

ゲームオーバー?

この場で帰れる権利を
放棄したとみなしま~すっ!!

あっ、あの~っ……
かっ、帰れないとどうなるんですか……?

それはあとのお楽しみで~す!!

お楽しみね……

では、みなさんご参加という事でよろしいですか~?

私は、ただ頷くしかなかった。

は~い!
それでは皆様、ご自分の椅子にご着席下さいませ~!

自分の名前の書かれた封筒の前に立つ、座ったらもう後戻り出来ない。

でも、拒否する事も出来ない。





私たちのゲームが始まった──

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