第11話「宮古ミント、Lv20だよー」





 チーム『ラブリーえんじぇる』のメンバーは、

喜多村はなび

矢中三春

芦原愛子

白雪瑠璃

宮古ミント

北条あむ

星野久留里

若葉瑞樹

橘立夏

シルク=シアタラ


 以上の、総勢十名です。
 この十人でわたしたちは、
 LIVEを行なっております。















ああおなか減ったね、愛ちゃん
帰りコンビニよろっか

うん、そうだね、ミミタン!


 引っ越してから三日、
 わたしとミントちゃんはすっかり仲良しです。

 ミントちゃんはすごく人当たりの良い子でした。

 先輩なのに親しみやすくて。
 同年代の友達みたいな感覚です。

 わたしたちはいろんな話をしています。
 お互いの趣味の話や、好きなアイドルの話。

こんな風に話をするようになってから、
まだ三日目ぐらいだけど、
ミミタンのこと、
ずっと昔から知っているみたい

えへへ、なんでだろうね、あたしもだよ


 わたしとミントちゃんは、
 手を繋いでお部屋に帰ります。


 その途中、ちょっとつまづいてしまいました。

大丈夫? 愛ちゃん

へいきへいき! ごめんね

そう?
最近無理していたし、
ちょっと疲れているんじゃない?

大丈夫!
だってアイドルやっているんだもん、
ちょっとぐらい疲れても、
へっちゃらだよ!


 わたしはおどけて力こぶを作ります。

 確かにレッスンのあとのLIVEは、
 すごく疲れちゃったけど。

 でも、みんながんばっているんだし、
 わたしが弱音をはくわけにはいけないよね。

 憧れのアイドルをやっているんだもん。


 でも、ミントちゃんはわたしをじっと見つめます。

ねえ、愛ちゃんは、
どうしてアイドルになりたかったの?

んー、わたしはずっと憧れていたんだー

そうなんだ

うん、だってアイドルってかわいいし、
いっつも笑顔で人を元気にできるし、
とっても素敵なお仕事だよ!

大変そうだなあ、とか思わなかった?

それは思っていたけど、
でも大変なことも今は楽しいよ!
わたしレッスン大好きだもん

そっかそっか


 ミントちゃんは、
 ニコニコとわたしの話を聞いてくれます。

だから、わたし、
前世でできなかった願いを――


 と、言いかけて。
 思わずわたしは口をつぐみます。

どうかしたの?

ううん


 もしかしたらミントちゃんや三春さん、
 瑠璃ちゃんたちにも前世の記憶があるんだろうか。

 わたしはふと思いついたのだけど、
 微笑むミントちゃんを見て、
 なにも言えなくなりました。

……


 わたしは思わず、胸がきゅっと苦しくなります。

 それは子どもの頃、
 自分が死んだらどこにいってしまうんだろう、
 って考えたときの気持ちに近くて。

 この世界にカードとして排出される、
 すべてのアイドルが、
 もともと意思のあった人間だったなんて、
 恐ろしい考えでした。

 だからわたしは、静かに首を振りました。

なんでもないんだよ、なんでも

そっかー


 前世のわたしは何のとりえもない、
 地味で目立たない女の子でした。
 テレビを見たり、動画を見たりして、
 アイドルに憧れているだけの子。

 今のわたしみたいに華やかでも、
 歌や踊りができるわけでもなくて。

 だから、ミントちゃんみたいに、
 ふわふわで可愛らしい女の子に、
 昔のわたしがそんな感じだったなんて、
 知られるわけにはいけないのです。

 と。

ねえねえ、愛ちゃん
明日どこかに遊びにいこっか

え?

ねえ、いいじゃない
明日はレッスン休みだし
そうだ、久しぶりに原宿いこうよ

う、うん


 ミントちゃんはわたしを励ましてくれているんだ。
 そう考えると、胸が熱くなります。

うん、いこう、ミミタン

やった、じゃあきょうは早く寝ようね


 わたしたちは笑い合っていました。

 ミントちゃんとデート、とっても楽しみだなあ。
 えへへ……。













 翌日、わたしたちは、
 普段の格好でお外に出かけました。
 アイドルになって以来、
 遠出するなんて初めてです。


 電車を乗り継いで原宿まで。
 夏の暑さは過ぎ去りつつも、
 まだじんわりと蒸しています。


 駅に降り立ちました。

わー、いつ来てもひといっぱいいるねー

そうだねー


 お手手つなぎながら、お出かけです。

 竹下通りには、いろんなお店があります。
 個性的なものばかりです。

ねえねえ、愛ちゃん
あたしお洋服見たいな

さんせいー!

ほらほら、これすごく可愛いよ

ねー

あっ、クレープ屋さん

ほんとだ、食べようよー

じゃああたし、バナナチョコかな
あっ、でもストロベリーもいいなあ

だったらふたりで、
一個ずつ買って、シェアしようよ

さんせいー


 えへへー、とわたしたちは笑い合います。
 ああ、楽しいなあ。

愛ちゃん、アイドル好きなんだよね

うん、大好きだよ

でも、だからたぶん、
がんばりすぎちゃっていたんじゃないかな

え?


 ミントちゃんはクレープを食べながら、
 ニコニコしています。

好きなものに夢中なのはいいけど、
たまには気晴らしも必要だよ
自分がやっていることは、
好きなことなんだから、って、
自分に言い聞かせていると、
疲れも弱音も出せなくなっちゃうから

そんな、わたしは……


 ぽんぽんとミントちゃんは、
 わたしの頭を撫でます。

大丈夫だよ、大好きなアイドルのこと、
たまには嫌いになってもいいんだよ
疲れたーやりたくないーって、
言ってもいいんだよ
好きな人に嫌いな部分が、
あってもいいんだよ、ね、愛ちゃん

ミミタン……


 わたしは嬉しくて、
 ミントちゃんの手を握ります。

うん、ありがとうね、ミミタン
でもわたしはほんとに大丈夫
大丈夫じゃなくなったそのときには……

いつでもおいで


 両手を広げたミントちゃんは、
 まるで天使ちゃんのようでした。

うん、わたしまだまだがんばるね!


 周りの人たちに、
 わたしはすごく恵まれています。

 とりかえっこして食べた、
 チョコバナナのクレープは、
 幸せの味がしました。




そして『イベント:夏祭りの握手会』の季節がやってきます









宮古ミント(R)
 
Lv 20 / 30
親愛度 83 / 100

特技:笑顔のおまじない
効果:全体のスマイルパワーを10%UP

京都府出身のアイドル。
のんびり屋で、夜更かしがニガテ。
元子役で芸能界にとっても詳しい。

取得個性:癒し系

第11話 「宮古ミント、Lv20だよー」

facebook twitter
pagetop