お絹

んう

翌朝、目覚めたお絹は自分のいる場所がどこだかわからず混乱しかけたが、何度かまばたきをするうちに昨日のことを少しずつ思い出してきた。

お絹

そうだわ、昨日は城を抜け出そうとしてスミスに見つかって、いつのまにか森にいて…とめ蔵が助けてくれて…なんか、いい匂い

階下から、トマトスープの香りが立ち上ってくる。お絹は誘われるように階段を降りていく。

お絹

おはよう

とめ蔵

おはよう、ございます

お絹

いい匂いね

とめ蔵

昨日作ったトマトスープです。
お口に合うといいんですけど

お絹

ぜひいただくわ。
でもその前に顔を洗いたいんだけど

とめ蔵に案内された洗面所で顔を洗い、服についた泥を落とすと、お絹は朝食の準備ができるまで外を散策することにした。

お絹

まあっ

外に出てお絹は思わず声を上げる。昨日は暗くてよく見えなかったとめ蔵の住む小屋は、丸太を組み合わせた作りの可愛いものだったからだ。

お絹

ふふっ
ふしぎの国にいるみたい

うっとりと眺めていると、そばで足音が聞こえるのに気づいた。

お絹

……

お絹は身構えた。昨日の今日だ。得体の知れないモンスターが襲いに来たのか……

その時ふいに森からガサリと”何か”が飛び出して、お絹は思わず

お絹

きゃあ

と尻もちをついてしまった。

……

お絹

……

そこに現れたのは青年であった。

お絹の叫び声を聞きつけて慌てて飛び出してきたとめ蔵は、青年を小屋に招いてお絹に紹介した。

とめ蔵

こちら、タロウさん

タロウ

タロウです。どうも

お絹

とめ蔵の、お友達?

タロウ

とめ蔵?

とめ蔵

かくかくしかじか

タロウ

……

いぶかしがるタロウに、とめ蔵は慌てて耳打ちし、察しの良いタロウは

タロウ

そうです。
とめ蔵の、お友達です

といった。

タロウ

レイ…じゃない、とめ蔵、

とめ蔵

…なに?

本名を言いかけるタロウに鋭い視線を向けながらとめ蔵は答える。

タロウ

コレ、多めに仕留めたから、お前にもやろうかと思って

それは、タロウが仕留めた獲物だった。

とめ蔵

おお! サンキュ

それはモンスターの肉で、この土地ではポピュラーな食べ物だ。とめ蔵の好物でもある。さっきまでの不機嫌はふっとんで、ハイテンションのとめ蔵に、さらにタロウは袋からとめ蔵の好物を取り出す。

タロウ

あと、これも

とめ蔵

あ!! アヒルの卵!!

さらにテンションの上がるとめ蔵をよそに、お絹は血なまぐさい匂いから気を紛らわすのがやっとだった。

お絹

うげ

とめ蔵

そうか、昨日のアレはお前だったのか

タロウ

ああ。結構デカかったよ。
ま、倒したけど

三人でテーブルを囲み、朝食を食べていると昨日の不快な音の話になった。どうやら、タロウが獲物を仕留めた音だったらしい。

だが、お絹はそれよりも気になっていることがあった。

お絹

アレがなんでこうなるのかしら

とめ蔵の料理の腕前に、お絹は感心していた。

タロウ

ところで、お絹さん。
どうやって帰りましょうか。

とめ蔵

……

お絹

……

誰もがその問題を忘れていた。

乙姫

ただいま~

地上からたんまりお土産を持ち帰ってご機嫌な乙姫は、門の前で大声を張り上げる。

使い女

おかえりなさいませ、乙姫様

使い女が門を開く。

乙姫

サンキュ

あわわわわ

乙姫

落とすなよ

乙姫は後ろを振り返って声をかける。

赤ずきん

いや、無理だって。
つかなにこれ、なにこの量!

乙姫

お土産じゃん

乙姫の後ろで大量の”お土産”を持たされた赤ずきんは、前が見えずふらふらとぎこちない。

赤ずきん

いやいやいやいや…

乙姫

しょーがないじゃん。
お前が来ると思ってないしさー

軽く不機嫌な様子の赤ずきんに、乙姫はいつになく饒舌だった。

乙姫

次、いつ会えるか分かんないしさー

赤ずきん

……

乙姫

買い物ぐらいで怒んなよ

赤ずきん

…へへへへ

なんとなく察した様子の赤ずきんは、例によって笑みを隠さない。

乙姫

~なに笑ってんだよ!

赤ずきんの笑みの意味が全くわかっていない乙姫は、語気を強めて言う。

赤ずきん

へへへ

乙姫

キモイわッこの変態がっ

スミス

殿下、いかがいたしましょう?

国王

う~ん…

王女の件が一人では解決できないと判断したスミスは、王に相談することにした。
しばらく思案顔だった王は、

国王

よしっ

と手をポンと叩いて立ち上がり言った。

国王

あれを使おう

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