食事を取りつつ、リアから先程の説明の続きと、地球へ無事帰還する為に達成しなければならない『任務』とやらの概要を詳しく聴き、互いの腹ごなしの終わりを待ってから、その補足の為にブリーフィングを執り行う事となった。
は~、食った食った。
味は微妙だけど、この完全栄養食ってのもなかなか悪くないな。
お粗末様でした。
しかし、こんな物まで作れるのにこの星が食料危機の末期とはまた不思議な話だな。
っと、この中で吸うのは不味いよな。
悪い、つい癖でな。
いえ、構いませんよ。
健康面から見るならば、なるべく控えて頂きたいですけど。
ああ、やめとくよ。
さっきそのせいもあってか、右手をがっつりといかれたからな。
そうでしたね。
彼らは熱や光といったエネルギーに対して強く反応するみたいですから。
なるほど、突き詰めればエネルギーの摂取という本能だけで行動している感じなのか。
皮肉な事に、栄養として取り込めるのは人体からのみという制限を、自らの遺伝子情報へと課せた結果があの惨状なのでしょう。
倫理的にもそうだが、食われるのが俺らってのもたまったもんじゃねぇな、全く。
輝明の言う倫理観というのもそうですが、私達の星は高い技術力を得た代償として、知らず知らずの内に多くの物を切り捨てて来ていたのでしょうね……。
少なくとも食べるものが無いからと言って、同じ人間を食べようとは胸糞悪すぎて考えもしたくないけどな、俺は。
あれ……?そういや俺名前なんて名乗ったっけか?まあ、いいか……。
……?
それで、さっき聴いた話の続きだけど、俺達の任務とやらはそのセントラルタワーとやらに向かって、コントロールルームからこの星の自爆装置を起動させるだけなのか?
食事を取りつつ、リアから先程の説明の続きと、地球へ無事帰還する為に達成しなければならない『任務』とやらの概要を詳しく聴き、互いの腹ごなしの終わりを待ってから、その補足の為にブリーフィングを執り行う事となった。
曰く、生き残った人々の最終的見解として、議会では以下の事が結論付けられたというのだ。
・この星の復興は最早不可能な状況である事。
・その後始末として移民船出発後にこの星ごと跡形もなく消す必要がある事。
・生き残った者の中から、誰かが既に多くの化け物の潜伏するセントラルタワーのコンソールにアクセスし、自爆装置を直接起動しなければならない事。
そして最悪のパターンとして考えられるのは、移民船によって化け物と化した彼らが外界へと広がり、被害が拡大する事だった。
はい、この星で起きてしまった事の後始末として、私達の誰かがこの悲劇に終止符を打つのは当然の責任ですから。
だからって、お前まで死ぬ必要があるのか?
どう……でしょうね、たまたま私の父が計画を実行する為のバディ・プログラムを開発したというだけで……。
ですが父本人も脚が悪く、周りで無事に生き残っているのが私一人でしたから、それ以外の適任者が居ない状況でしたので。
こうも世界が絶望に見舞われた後では、私一人が運が悪かったと嘆くのも何だか、お門違いな気もしますから。
確かになぁ、何とか脱出方法も考えてやりたい所だが、俺には知識が足りなさすぎて、どうする事も出来ないのも事実だ。
先程述べたように、エネルギーに敏感な彼らは恐らく、既に移民船の動力炉に引きつけられ、船内は巣窟と化しているか……、そもそも移民船に近づけるかどうかも怪しい所です。
あんなのがうじゃうじゃ居る所なんて、想像するだけで身の毛がよだつな。
それにさっきのいちごみたいな……。
……?
ええと……、そうか。
さっきの赤と緑の奴以外にも色んな種類が居るんだよな?
はい、大抵彼らは人の部分と、それに人ならざる捕食に適したナニカに変容した部分で構成され、その姿形はさまざまです。
ただ、共通して言える事はその残った人間部分が最大の弱点という事です。
なるほど、さっきの奴も咄嗟に腕を蹴ったせいでやたら簡単に倒せたからな。
壁に激突したのも腕からだったように見えたな。
というか、あれで死んでくれたんだよな?
多分……。
恐らく大丈夫でしょう。
私には無理ですが、輝明にとって彼らの人の部分は酷く脆く感じるはずです。
なら、何かリーチのある鈍器のような武器があるとこの先助かりそうだな。
すみません、争い事の無かったこの星には武器という物が存在していないので……。
いや、そうだな。
そこは難しく考えずに、普段使う道具の中から選べばいいのさ。
例えば、そうだな……。
お?
こういった工具とか。
つまり何かに使う道具を流用すればいいのさ。
それでしたら、この研究所から数件先に工具店がありますよ。
なら、タワーに向かう前にまずはそこで武器の調達をするか。
物によってはお前さんが護身用に使えそうなものもいくつか見繕えるかもしれないしな。
そうですね。
彼らは人だった頃の習慣を守ろうとするので、深夜には活動が沈静化するはずです。
なので、出発するのは深夜になってからにしましょう。
そうだな、何だかんだでこっちに来てから色々あって疲れたし、ここらで一休みしたかった所だ。
はい、時間になったら声を掛けますので、少し横になっていて下さい。
出発の準備はこちらでして起きますから。
悪いけど、お言葉に甘えさせて貰うよ。
それじゃ、おやすみ。
はい、おやすみなさい。輝明。
Zzz...
……。
リア!!
ああっ……、ごめんなさい。
そんな、輝明……。私のせいで。
……ッつ。
しくじったか……、くそっ、もう離してくれそうにねぇなこいつは。
どうして……、そこまで。
あなたは死ぬのが怖くないの?
そりゃ……、怖いさ。
でもな、それに少しでも可能性が残ってるなら、俺はそれに賭けるだけだ……。
だからって、私を庇ってまで!!
いいんだ……、これは投資だ。
投資……?
そうだ、例えこれで二人共死んじまったとしても……、託すんだ。
次の……、お前に!
だからこれは『投資』なんだ!!
輝明!!
!?
あ、目が覚めましたか?
丁度いま起こそうかと……。
何だ……、今の夢は?
……どうかしましたか?
……。
ああ、いや……なんでもない。
……。
そう……、ですか。
よし、俺も残りの準備を手伝おう。
はい、ありがとうございます。
……。
よし、準備は整ったな。
それじゃ、出発するか!
はい!準備万端です!
っと、その前に大事な事の再確認だ。
認証コードは『バディ』で、良いんだよな?
はい、バディ・システムが起動した時点で、バディである私か輝明どちらかの生体反応と声紋認証だけが、起爆キーとして有効なはずです。
……。
まずは工具店へ向かいましょう。
道案内は私がしますね。
ああ、安心しな。
道中は騎士の俺がちゃんと守るさ、『お姫様』。
……はい♪
さあ、行こう!
はい!!