俺は莉瀬が好きで、
莉瀬も俺を好きだと言ってくれた
付き合うんだよ、俺たち
千雪の大作戦・その1
ピチチッ……チュンチュン……
…………
──と、いう夢を見た
っていうオチだったら良かったのになあ。
はあ……。
現実って厳しいぜ
今日が土曜だったから良かったけど、
月曜から涼介と
どんな顔して話せばいいんだよ
つーか、もう話す必要もねえか。
あんなヤツ絶交だ絶交!
階段の下から声がした。
洋平ー!
お友達? が来てるわよー!
(なんで『お友達?』って抑揚なんだよ。
涼介だったら嫌だなあ……。
寝た振りしとくか)
早く下りてきなさい!
寝た振りしてるのはわかってるのよ!
(うるせえなあカーチャン。
借金取りのようなしつこさだ)
(あんなの無視だ、
ムシムシッ!
もう一眠りしよ~っと)
ZZZ……
あの……。
お邪魔します……
うわっ、千雪ちゃん!?
なんで???
洋平お兄さんのお母さんに、
部屋に入ってもいいって
言われました……
そ、そう!
ちょっと片付けたいから、
廊下で待っててくんねえかなあ!?
ボクも手伝います……
うわー! 駄目だって!
それは触らないでくれー!!
なぜ駄目なのでしょうか……。
解せません……
いいから廊下で待ってよう!
なっ?!
洋平は千雪から雑誌を取り上げて、
廊下に追い出してしまった。
──5分後。
(と、とりあえずこれでいいかな。
あんまり待たせるわけにもいかねえし)
もう入っていいよ千雪ちゃん
はい、です……
その辺に座ってよ
はい……。
あっ……
千雪が壁に駆け寄った。
壁には人気アイドルの
雲母 亜百合(きらら あゆり)の
ポスターが貼ってあった。
あゆりんのポスターです……
ああ。
俺、あゆりんのファンなんだよ。
千雪ちゃんも好きなの?
ボクも大ファンです……。
このポスター、
ボクにくれませんか……?
そ、それはちょっと……。
そのポスターは
俺のお気に入りなんだよ。
ごめんな?
むう……
ところで今日は、
何の用事で来たの?
洋平お兄さんが、
彼女を作るお手伝いに来ました……
かっ、彼女?!
なんで?!
すべておにぃから聞きました……
あいつマジかよ!
俺が莉瀬ちゃんに振られたってこと、
なんで喋っちまうんだよ!!
洋平お兄さんが好きだった人って、
おねぇだったんですか……?
え゛っ。
涼介からはなんて聞いたの?
おにぃが恋の邪魔をしたから、
洋平お兄さんに嫌われてしまった……。
だから、洋平お兄さんはもう
うちには来ない、と聞きました……
最悪だ!
莉瀬ちゃんに片思いしてたこと、
俺の口からバラしちまった!!
ドンマイ、です……
ううっ……。
悪いけど、帰ってくれよ千雪ちゃん。
今日は一人になりたい気分なんだ……
洋平お兄さんに彼女ができるまでは、
帰れません……
うちで暮らす気か!
そんなに気の長い話でもないと
思います……
なんで?
はっ、まさか!
千雪ちゃん、俺のことが好k
違います……
いや、違うってのはわかってたけどさ。
最後まで言わせてくれよ
ボクには……。
洋平お兄さんが彼女を作るための、
秘策があります……
もし無事に彼女ができたら、
あゆりんのポスターを
ボクにくれますか……?
いいよ!
ついでにこの部屋に有るあゆりんのグッズ
全部あげてもいいぜ!
さっきは渋っていたのに、
ずいぶん大盤振る舞いです……
だって千雪ちゃんが手伝ったくらいで、
俺に彼女ができるわけねえからな!
後ろ向きすぎます……
で、千雪ちゃんの秘策ってなに?
それは……
…………
急に黙り込んでどしたん?
次回に続きます……
あっそ
次回はボクが魔法少女になって
洋平おにいさんのお悩みを
解決します……
ここにきてファンタジーなの?
唐突ね
魔法少女というのは、
ひとつの例えです……。
おねぇは脳筋だから
説明してもわからないでしょうが……
失礼ね!
誰が脳みそまで筋肉で
構成されてる女よ!!
そうやってすぐ怒るから、
脳筋って言われるんじゃ…
違うわよ!
こういうのは脳筋じゃなくて
単なるヒステリックって言うの!
(自分でヒステリックと
認めてしまいました……)
次回『千雪の大作戦・その2』
お楽しみに……