ミヤ

み、「ミヤちゃん」って……
もしかしてあなたは……

タキ

……うん、そう。私は2022年の
滝沢 多岐。

タキ

こんな奇抜な見た目の私になる
なんて、あんまり信じたくないけどね。

ミヤ

ま、まあ、そうね。この世界の
タキちゃんは……

タキ

「タキちゃん」は――……

ミヤ

あっ……

タキ

いいんだよ。全部見てきた。
この人格は2022年の滝沢 多岐だけど、
他のどの世界の私でもあるんだ。

タキ

わかって言ってるんだよ。
今までのことも、何もかも。

ミヤ

そ、そうなの……

ミヤ

……ごめんなさい。私が
至らないばっかりに、今まで
失敗を繰り返してしまって。

タキ

いいんだ。ミヤちゃん。
大丈夫だよ。

タキ

許せないことがあれど、積もる話が
あれど、私たちはこうしてここまで来れた。

タキ

私が、ミヤちゃんと最期までいられる。
私はそれだけで充分だよ。

ミヤ

……ええ、そうね。
ありがとう。

タキ

うん。それで、
聞いて欲しいことがあるんだ――……

タキ

この世界では、記憶のあるミヤちゃんと
記憶のない私が時間によって区切られ
謎を解決するよう仕向けられてる。

タキ

時間は厳格に分けられ、チャイムで
強制的に覚醒と入眠……と言って
いいのかな、外界とのオンオフを
繰り返してる。

タキ

あ、時間とタイムラグについては
考察通りで間違いなかったよ。
私は昼から夜を経験したあと、
夕方と明け方に突入したからね。

ミヤ

まあ……

タキ

疲れて途中で寝ちゃったり、
不安になって怖くなったりしちゃった。
昼と夜は心身の感覚が一緒みたい。

ミヤ

それは……もっと私が
シャンとしていれば気苦労を
させずに済んだのに……

タキ

それは違うよ、私のせい。今までの
ことは謝ろうとしなくても大丈夫だよ。
……でも、ありがとう。

ミヤ

え、ええ……

タキ

オンオフについては2024年の……
この体の私が言った、洗脳に近いのかも
しれない。私たちに組み込まれている
から破られようがない、防ぎようもない。

タキ

私たちの記憶があったりなかったり
するのも、組み込まれているシステム
だからだと思うとしっくりくる。

タキ

解答を忘れる頭、リセットされる体、
いつも解けない謎、足りない時間、
目覚めない私……

タキ

これらはみんな超自動的なもの
なんだよ。きっと。

ミヤ

超自動的な……

ミヤ

……でも、それならおかしな点が
いくつもあるわ。

タキ

そうだね。

タキ

謎が半端に残されているのは何故か?
いくつもの世界から私が送られるのに対し、
ミヤちゃんの記憶が一辺倒なのは何故か?

タキ

それに、学校の敷地内の気温と
空の景色が違うのは何故か。
学校は時が固定されているようなのに、
設備がまちまちなのは何故か……

タキ

私の行った夜時間は、昼時間で
行ったときと理科室の構造が違ってた。
改修されたのは2020年だから、
それ以前とそれ以降が存在する。

タキ

体育倉庫の蛍光灯が切れてたり
したしね。あれは参っちゃった。

ミヤ

よ、夜中にそれは大変ね……
本当にご苦労様……

タキ

はは、ありがとう。

タキ

それらの不可解な点は、この世界が
おかしくなっていて、脱出しなきゃいけない
と思わせるためのきっかけだと思ってた。

タキ

でも、たぶん違う。誰かが私たちを
閉じ込めたくて閉じ込めたんなら
謎は一辺も残さず回収するはずだし、
そんな調整ミスも繰り返していくうちに
途中でなくなるはずでしょう?

タキ

しかし、それらが顕著になるまで
放っておかれた……これは、
わかってくださいと言っている
ようなものだよ。

タキ

つまり、それもシステムとして
合ってるんだ。おかしい、として
疑問に持つのが正解なんだ。

ミヤ

何だかいやね。
手の上で踊らされているみたい……

タキ

みたい、じゃなくて実際そうなんだよ
ミヤちゃん。私たちは、この世界から
出られない。

ミヤ

えっ……!?

タキ

……正確には、出られるようには
出来ていない。かな。

タキ

だからね、ミヤちゃん。
落ち着いて聞いて欲しいの――……

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