僕たちはアンデッド騒ぎのあった
レビー村を出発し、
翌日の昼には関所を越えて
ラート共和国へ入った。

――いよいよ新しい土地だ!


まずは関所から一番近くにある
リパトの町を目指す。
 

アレス

…………。

ミューリエ

どうした、アレス?
深刻そうな顔をして。

アレス

うん、だってあの魔族が
いつまた襲ってくるか
分からないから……。

ミューリエ

だからといって、
いつもそんな感じでは
疲れてしまうぞ。
大丈夫、私がいる。
もう少し力を抜け。

タック

オイラだっているぞ~♪

ミューリエ

ま、タックも見張りくらいの役には
立つだろう。

タック

相変わらずオイラに対しては
ヒドイ扱いだな……。

ミューリエ

当然だ。
お前は単なるオマケだからな。

アレス

ダメだよ、ミューリエ。
そういうことを言ったら!
レビー村では
タックに助けられた時も
あったでしょ?

ミューリエ

う……うむぅ……。

タック

やーい、
アレスに叱られてやんの~☆

ミューリエ

うるさいっ!
やはりお前とは気が合わんっ!

アレス

あ……。

ミューリエ

どうした?

アレス

そういえばミューリエ、
ちょっと前からタックのことを
『お前』って呼ぶように
なってたよね?
最初は『貴様』だったのに……。

ミューリエ

なっ!?

アレス

僕、気付いてたんだけど、
なかなか聞くタイミングが
なくってさ。

タック

へへぇ?
そっかぁ、
少しはオイラのことを
認めてくれてたのかぁ~。

ミューリエ

……それは否定せん。
役に立ったのは事実だし、
アレスの信頼もあるようだからな。
だが、認めているといっても
ほんの少しだぞ?

アレス

ミューリエ、素直じゃないなぁ!

ミューリエ

バカものっ!
アレスまで私をからかうなっ!

タック

あひゃひゃっ!

アレス

じゃ、タックも少しはミューリエと
仲良くしてね?

タック

えぇっ?

アレス

あまりミューリエを
からかわないこと!
いいね?

タック

……う……うぐ……。
そ……それは……。

ミューリエ

あはははっ!
アレスの言うこと、
聞かないわけにはいかんよな?
タック?

タック

ううううう~……。

アレス

あはははははっ!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
こんな感じで僕たちは街道を歩き続け、
レビー村を出てから約4日で
リパトの町へ到着した。


シアと比べると町の規模は少し小さいけど、
市場の活気はこちらの方があるような気がする。

特に目立つのは
武具や魔法道具などを扱う店の多さだ。
 

アレス

道具屋が多いね?

タック

ここの近くには遺跡が多いし、
武具を作る鍛冶屋や工房が
多いからさ。
それを求めて訪れる
交易商人や冒険者も
多いらしいよ~☆

アレス

タックって物知りだね?

タック

まぁな~。オイラだって、
伊達に長く生きてないさっ♪

アレス

そういえば、
タックって何歳なの?

タック

400歳くらいかなぁ。
正確にはもう忘れた~♪

アレス

えぇっ?
そんなに年上だったのっ!?

タック

あ、別に気を遣わなくていいよ。
だってオイラたちは
一緒に旅をする仲間なんだし。

アレス

タック……。

アレス

うんっ!

ミューリエ

アレス、これからどうする?
すぐに試練の洞窟へ向かうか?

タック

ここを過ぎたら試練の洞窟まで、
町も村もないよ~?

アレス

だったら、
少し滞在してお金を稼ごうかな。
そろそろ懐が寒くなってきたし。

ミューリエ

そういえばレビー村にいた時、
カネを用意する当てがあるとか
言っていたな?

アレス

うん。

タック

オイラはアレスに従うよ。
どこにでも付き合うぜ~。

ミューリエ

では、
私は少し街を見に行ってくる。
タック、アレスのことを頼むぞ。

タック

あいよ~☆


こうしてミューリエとは
宿で落ち合う約束をして、
僕とタックは町の青空市場を歩き始めた。

 

タック

アレス、何か買うのか~?

アレス

うん、材料をね。
これだけ大きな市場なら
欲しいもの全て揃うと思うんだ。

タック

材料?

 
青空市場を歩いていると、
あちこちから活気のいい声が聞こえてくる。

この平和で穏やかな雰囲気が僕は好きだ。
散歩をしているだけで楽しくなってくる。

故郷の村では
月に一度だけこういう市が出たけど、
いつも楽しみだったっけ……。
 

店員のおじさん

いらっしゃい、
いらっしゃーい!
何でも安くするよー!
オマケもしちゃうよー!

 
市場を見て回っていると、
目的のもののいくつかを取り扱っている
店を見つけた。

僕は足を止め、店員のおじさんに声をかける。
 

アレス

すみません。

店員のおじさん

いらっしゃい!

アレス

えーっと、
この薬草とこの薬草、
それからこの薬石を
3つずつください。

店員のおじさん

毎度っ!

タック

なぁなぁ、おっちゃん!
安くするとかオマケするとか、
何かしらのサービスしろよ~!
さっき大声で言ってただろ~?

店員のおじさん

はっはっは!
分かってるって!
んじゃ、
この薬草を1束オマケしとくよ!

アレス

あはは、ありがとうございます。

 
その後も何件かで買い物を済ませ、
僕たちは宿へと戻ることにした。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 

 
宿にはまだミューリエは戻ってきていない。
夕食の時間まで数時間あるから、
当然なんだけど。

それに僕たちは、
このあともまた出かけるんだけどね。
 

タック

随分と色々買い込んだな?

アレス

タック、
荷物を持ってもらっちゃって
ゴメンね。

タック

気にするな。
オイラは
アレスの役に立てると嬉しいんだ。

アレス

じゃ、
完成したら1つタックにあげるね。

タック

何を作るんだ?

アレス

それはまだ秘密だよっ♪

 
さて、
それじゃ久しぶりに『アレ』を作ろうかな。

何もできない僕にとって、
唯一の特技ともいえるあの技術。

『芸は身を助く』という言葉があるけど、
それがこうして役に立つ時が
来たというわけだ!
 




次回へ続く……。
 

第22幕 第2の試練の洞窟へ!

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