ほら兄、さっさと支度しなさい

うう、気が向かない…

気が向かないじゃないわよ!金詰んで大学行かせろだなんて、社会を舐めている証拠よ!

まあ、兄さんの場合は影響されやすいというかなんというか

バカってことよ!

それは否定できないね

ガーン!

とにかく、あんたは進学するにしろ就職するにしろ、ちょっとは働く事やお金を稼ぐことを理解しておかないとダメ!

それで、姉さんのお店でバイトかぁ

そうよ。うちなら多少のミスはあたしがフォロー出来るし、仕事も教えられるからね

行きたくないー!

イイから行くわよ!

姉さん、優しいなぁ

いきなり外に放り出すのは危なっかしすぎるんだもん。ほら、ちゃんとバイト代も出すんだから、いいじゃない

う、ううむ…
しかし洋服を売るなんて兄には……

兄さん、
姉さんの好意を理解しないとダメだよ

…はい

弟に諭されちゃって。
よし、行くわよ兄

うう、イッテキマス

いってらっしゃ~い。…兄さんが販売か。
姉さんも苦労するね

姉の店

あ、店長おはようございます。
この子が昨夜言っていた兄君ですか?

おはよう。そうよ、一日よろしくね

はい! 兄君、よろしくね

よ、よろしくお願いします

なんて綺麗な人なのだ。兄は頑張れる!

…しかし、背の高い店員さんだ。
肩もしっかりしている

あの子に惚れちゃだめよぉ

あ、姉!? でも綺麗な人だぞ

あの子も、あたしのお仲間だからね~

お仲間…?
ま、まさか!?

うん? どうしたの、兄君

あ、あの姉のお仲間と言われたのですが…

ええ、私もそっちの人よ

そっちって…

オカマ

……世は無常だ

あら、そういえば試着室入ってるの?

ええ、もう三室全部入ってます。もうすぐ着終わると思うのですけど

あらあら、今日は客入りがいいわね。
どんな人たち?

皆様 素敵な方ですよ

試着待ち…緊張する

あ、試着終わったかしら?

お疲れさまです

騎士田さん(36歳) 趣味、園芸

いやー、どーも。サイズピッタリです!

まさかの全身甲冑!?

うふふ、お似合いですわ!

あら、騎士田さんまた鎧の新調なのね

騎士田さんて!

お。姉さん久しぶり!
やだねー、太っちゃってさ!

あ~ら、毎回うちで鎧作り直してくれるなら、ドンドン太って欲しいわぁ~

あっはっは!
そうくるかー!

でも、顔すっきりしてるじゃない?
ホントに太ったの?

顔見えねぇよ

太った太った。参っちゃうね。
ん、もうこんな時間か

なんで小手見て時間がわかんだよ!?

もう行かないと。
これ、着て帰っていい?

 御 出 陣 !?

いいわよ

いいんかい!

じゃあ、あちらでお会計をお願いしますわ

はーい。姉さんまたね!

気をつけて帰るのよ、騎士田さん

…なあ、姉。
ここ、洋服屋さんだよな?

そうよ。なによぉ。
どこからどう見ても洋服屋さんでしょ?

…兄、あんまりこういうお店こないから……

あ、向こうの方も試着終わったのかしら

キリスくん(29歳) 趣味、馬小屋でわーぉ

サイズぴったりでした!

むしろ着てない!

あら、キリスさん十字架ぴったり

どう見ても試着室の横幅よりでかいんだが…

いい感じよー

無視ですかそうですか

急な注文だったのに、間に合わせてくれてありがとうございます!
これで安心してカッコよく磔られる

積極的マイナス思考

燃えにくい木材を使ったので、火刑にも安心ですよ!

そのうえお手頃価格で家計にも優しいのよ

そのうえかっけぇってか!

うふふふふふ!

おほほほほほ!

あははははは!

死に様ジョークとか笑えない!

じゃあ、これ着たままゴルゴタにいくんで、お会計を

はーい!

もうやだ、もう突っ込まない

あら、最後のお客様も終わったのね

久しぶり! おにぎり先生(35歳)だよ!
(※修学旅行夜編参照)

もう鎧も布さえも着てない!!

ふう、どうかな?

お似合いですよ!

何が!?

いやぁん
上腕二頭筋あたり、特にいいわよ!

服関係ないじゃん

おや、この子は?

あ、あたしの弟で兄っていいます。ちょっと研修なうって感じ

ほほ~~う。君はどうかね、これ。ふん!

ポーズとられて感想求められるとか、つらっ

じー

じー

じー

え、ええと……

白いパンツが、いいですね……

・・・

・・・

・・・

ま、まずい…

君、解かってるねー!!

兄君凄い!
そこに気付けたかー

我が弟ながら、見所十分よ、兄

褒められた

じゃあ、これこのまま着ていこうかな

毎度ありがとうございま~す

捕まるだろ、それ

今日は一日お疲れさま~

おつかれさまです!

…姉

なあに?あんたも頑張ったわよ

……仕事って、大変だな

そうよ、あんたも頑張りなさい

うん

兄、頑張る!

……姉さんに任せた僕が馬鹿だった。
はあぁ……

~つづく~

pagetop