さーさーのーは　さ～らさら～

七夕だねぇ、
もう一年も半分以上おしまいか

早いものだな

さあさ、短冊に願い事を書いて
笹につるしましょ

姉、一人いくつまでだ？

普通は一個なんだろうけど…
３人で一個ずつじゃ寂しいわね

じゃあ、三つくらいでどう？

そうしましょう

願い事、願い事かぁ

二人ともちゃんと書けた？
短冊を笹につけるわよー

短冊の穴に紐を通して…

枝につければ出来上がりっと

で、二人はどんな願い事をしたのしから？

それ言わなきゃダメなのか！？

何よ兄、あんた言えないような
願い事したわけー？

そ、そうではないが…

じゃあ、見てもいいでしょ？

う、ううむ…

どれどれ…

…全部おんなじじゃない

兄さん…

恥ずかしい…

あのね、兄さん。別に短冊でお願いしなくても、僕は仲良くするから…

ほ、ほんとか！？ほんとにこの兄とずっともでいてくれるのか弟よ！？

ずっともは何か違うかもだけど…
まあ仲良くしていこうよ

おおおお…！
我が愛しの弟よ！

緊　急　回　避　！！

あぶどおうふっ！？！？

な、何故避ける！？

仲良しでいる事と、抱きとめる事は違うよ

ううう…

久しぶりのパターンだったね

こんな懐かしさはいらない…

何やってるんだか

そういう姉はどんな願い事を書いたんだ？

あたし？あたしはね～

…即物的というか俗っぽいというか…

人間の欲望なんて本来
こんなもんなのよ！

はっ、オカマが石油王と出会ったも何にもおきねぇっつーの

うわっ、父！

いつの間に…

夕飯たかりにきたら何やってんだお前らは。
ちっこい子供じゃあるまいし

うっさいわねぇ。ほっときなさいよ

イベントはイベントで、素直に楽しめばいいと思うよ、父さん

ばーか。織姫だか彦星だかが実在するとしても、だぞ？一年に一度、一晩しか会えない恋人同士なんだろ？

そりゃあおめー。地上の願い事なんざ見ている場合じゃねーだろ。一晩中【規制】して【検閲】して【制限】しっぱなしよ

…いいなぁ

うっさい！規制されるようなことでっかい声で言いまくるな！

は？　規制？

こっちの話！

はいはい、わかりませんねーっと。
おら、飯にしよーぜ飯

ほんっとに勝手なんだから。
もういい、仕度して来るわよ

姉、手伝う

じゃあ僕も行こうかな

やあれやれ、いつまでたってもガキなんだな、あいつら

こんなもんに願い事吊るして、どーすんだよ

…しかし、すっかすかだなぁ、この笹

ああ、そういや読み終わった本がどっかにあったっけ？

しおりの紐でつるしておくか。
重さもちょーどいいだろ

ちったぁしなりが出来たほうが風情もあるってもんだ。よっと

…こんなもんかな

ほら、あんたこそ何遊んでるのよ。
ご飯出来たわよ！

ああはいはい、今行くよ

…ん？笹が光って……

…消えた！？

こいつは、一体……

……ま、七夕の笹なんざ、そんなこともあるか。それより飯だ飯！

逢いたかった、彦星！

僕もだよ、織姫！

嬉しい、今年も二人で地上の皆の願い事をかなえましょう

僕はその～、ちょっとは二人の時間も欲しいかなーって…

うふふ、そうね。じゃあとりあえず、一つだけ笹をとりましょう

うん。じゃあ、これを

短冊と、これは…本かしら？
不思議な願い事のつるし方だけど

じゃあ、この願い事を形にして…

うわぁ！？

な、なに！？

…ここは？

だ、誰だ君は！？

おお、メロス！
ずっと待っていたぞ！

…メロス？

さあメロス、私を殴るんだ。
私はたった一度だけ君を疑った。はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない

何言ってるんだ、この人！？

さあ！殴ってくれ！

ちょ、ちょっと
あなたなんなのですか？

む？このお嬢さんは…？
ははぁ、メロス、君ときたら真っ裸じゃないか。早くこのお嬢さんの着物を頂くといい。このかわいいお嬢さんは、メロスの裸を皆に見られるのが口惜しいのだ

これはあたしの着物ですー！！

それともメロス、親友二人きり、肌と肌で熱い抱擁を交わすかい！？

うわああ！来るなぁぁぁ！誰だよ！？
こんなもの笹に結び付けた人間はーー！！

メロスぅぅぅぅ！！

だーかーらー！　
笹はいきなり消えたんだっつーの！

笹がいきなり消えるわけないでしょーが！

本当だっつーの！

…願い事、かなうといいな

そうだね、兄さん

…弟は、何を願ったのだ？

僕かい？

秘密

願い事、本当にかなうといいな