村人F。それが俺の名前だ。
 FはなんのFだって?
 特に意味はない。

 神様がこの村の人間を、

神様

A、B、C……

 と、造りたもうた順番を示すアルファベットだ。

 だからといって、村人Aが俺たちの中で一番偉いわけではない。
 Aなら、村の出入り口に立っている。

村人A

セーニョ村へようこそ!

 夜になったら自宅のベッドで、

村人A

ぐーごごー

 と、眠りこけるだけの存在だ。
 ちなみに、旅人が村を訪れたことはない。
 なのに、Aは「ようこそ!」以外の言葉が喋れないのだった。

 俺だって、人のことを言えない。
 ひたすら畑を耕す毎日だ。
 誰かに話しかけられても、

村人F

やあ! 今日はいい天気だな!

 としか返事ができないのだ。

 しかも、チェック甘々の神様め、俺には夜用のセリフが用意されていなかった。
 いくら進行的にさほど重要ではない村だからってあんまりだろう。
 おかげで俺だけは、

村人F

やあ……今日はいい天気だな……

 頓珍漢な寝言を喋るヤツになっていた。

 そもそも、『いい天気ではないな!』なんて日が今まであっただろうか?
 いいや、ない。
 夜が明ければ、澄み渡る青空が広がっている。
 それがこの世の常だ。

01. セーニョ村の日常

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