村人F。それが俺の名前だ。
FはなんのFだって?
特に意味はない。
村人F。それが俺の名前だ。
FはなんのFだって?
特に意味はない。
神様がこの村の人間を、
A、B、C……
と、造りたもうた順番を示すアルファベットだ。
だからといって、村人Aが俺たちの中で一番偉いわけではない。
Aなら、村の出入り口に立っている。
セーニョ村へようこそ!
夜になったら自宅のベッドで、
ぐーごごー
と、眠りこけるだけの存在だ。
ちなみに、旅人が村を訪れたことはない。
なのに、Aは「ようこそ!」以外の言葉が喋れないのだった。
俺だって、人のことを言えない。
ひたすら畑を耕す毎日だ。
誰かに話しかけられても、
やあ! 今日はいい天気だな!
としか返事ができないのだ。
しかも、チェック甘々の神様め、俺には夜用のセリフが用意されていなかった。
いくら進行的にさほど重要ではない村だからってあんまりだろう。
おかげで俺だけは、
やあ……今日はいい天気だな……
頓珍漢な寝言を喋るヤツになっていた。
そもそも、『いい天気ではないな!』なんて日が今まであっただろうか?
いいや、ない。
夜が明ければ、澄み渡る青空が広がっている。
それがこの世の常だ。