そんなわけで、僕は玻璃さんを自宅へと連れてきた。
見慣れた古い和風の家。
その門前に、僕と玻璃さんは立つ。
そんなわけで、僕は玻璃さんを自宅へと連れてきた。
見慣れた古い和風の家。
その門前に、僕と玻璃さんは立つ。
大きい家
庭が広いってだけだよ。
家自体はそうでもない
とは言っても、比較対象が美香の家くらいしかないので、一般的かどうかは知らないが。
自転車は……どうしたらいい?
庭に入れてもいいけど……砂利が多いから、ここにとめておいた方がいいよ
ただ歩く分には問題ないが、走ったりすれば間違いなく転んでしまう。
馴れていない人だと、自転車を押して歩くのは難しいだろう。
わかった
玻璃さんは門の側に自転車を置き、僕はそのまま砂利道を押し進む。
姉ちゃんに泣く泣くお願いして使わせて頂いている自転車を駐輪場へ置き、僕と玻璃さんは玄関に向かう。
……と、玄関の扉に手をかけたところで、ふと僕は思う。
そういえば友達を家に招くなんてのは、美香以外に何年ぶりになるんだろう……
随分と、久しぶりな気がする。
思いつつ、僕は扉を開けて、靴を脱ぐ。
ただいまー
留守番中の縫姫ちゃんに向けて僕は言った。
……が、しかし返事は無かった。
あれ……洗濯物でも取り込んでるのかな?
まぁいいか、と思いつつ僕は振り返る。
さ、入ってよ玻璃さん
…………
視線の先の玻璃さんは、何も言わず、玄関に立ち尽くしていた。
…………
あれ!? このタイミングで謎の沈黙!?
否。
玻璃さんは、一点を見つめていた。
その目線の先。
玄関を開けば嫌でも目に付くそれ。
それとはつまり、親父の買った水晶。
幸せになる水晶。
それを、玻璃さんは、ジッと見つめていた。
……玻璃さん?
……なるほど。
やっぱり、そうだった。
いつも無表情の玻璃さんは、
少しだけ口角をあげた。
薄らと、
どこか不気味で、
静かな笑み。
と、そこで
おー、ケンスケ君、お帰りー
洗濯物いっぱいで大変やー
縫姫ちゃんの声が聞こえたので、僕は再び玻璃さんに背を向ける。
すると、腕いっぱいに洗濯物を抱えた縫姫ちゃんが廊下の奥からよろよろと歩いてきたのが見えた。
そのとき。
僕の横を、風が駆け抜けた。
……!
……!
それを感じると同時に、板を叩いたような音が、廊下に響く。
僕の隣を駆け抜けた『ソレ』は、
縫姫ちゃんが持っていた洗濯物の一部を剥ぎ取り、
そのまま突き抜けて、
壁に突き刺さっていた。
『ソレ』。
僕の視線の先にある『ソレ』とはつまり……
全てを貫く不屈の意志。
(ジャイロジャストジャスパー)
『不敵の均衡』
ダーツ。
オレンジ色に輝く矢羽根と、鋭く金色に光るシャフト。
玄関に立つ玻璃さんの指には、壁に突き刺さったものと同じダーツが、いくつも握られていた。
そして玻璃さんは、いつもと同じ、無表情のままで、口を開く。
『私』を、返してもらう