雨が降っていた。
寒い。冷たい。心細い。
爺さんともファンテともはぐれてしまった俺は、森の中をひとりきりで歩いていた。そして疲れ果て、大木の根本に座り込んでしまった。もう動けない。
爺さん。ファンテ。
声にならない声で二人を呼ぶ。
ああ、これは俺が体験した過去だ。幼い俺が体験した、あの雨の日の出来事だ。
じっと二人を待ちながら、凍えながら、俺はいつしか眠り込んでいた。気付いた時、誰かに抱きしめられていた。
微かなぬくもり。人のぬくもりだ。
俺を抱く腕に、銀色の花をあしらったブレスレットが揺れていた。
俺はぎゅっとそのぬくもりにしがみつく。ぬくもりの元を全て奪うかのように。強く、強く。