夕食後、縫姫ちゃんは当たり前のように洗い物を始めた。

 聞くところによると今日は家の掃除から洗濯まで、全てを縫姫ちゃんがやったらしい(姉ちゃんも手伝え)。

 なんだか任せっぱなしで申し訳ないので、僕は洗い物を手伝うことにした。

 縫姫ちゃんの隣で皿を洗いつつ僕は聞く。

ケンスケ

 ……縫姫ちゃんは、どうして進んで家事をしてくれるんだ?

縫姫

 んー?
 そりゃあ、家族を幸せにするのが私の仕事やからな

ケンスケ

 なんということだ……
 天使は実在したのだ

 しかし、幸せ……か。

 なるほど、幸せになる水晶から出てきたのだから、縫姫ちゃんはそういう存在ということだろう。

 ……いやいや、ちょっと待て。

 ならば、ならば僕の親父は、本物の、幸せになる水晶を購入した、ということになるではないか。

 それを認めてしまっていいのか……?

ケンスケ

 …………

 白い女との因果関係も気になる……。

 しかし肝心の本人が記憶喪失だ。

 ならば自分で調べるしかないのだろう。

 ひとまず、白い女の噂がいつ頃からあったのかを正確に調べるべきか?

 しかし……どうやって……?

 ……インターネットとかに情報乗ってないのかなぁ。

 そういえば以前に美香が言っていた。

美香

 ググれカス!

 ググレ先生とかいう人にインターネットで質問すると何でも教えてくれるらしい。

ケンスケ

 ふぅむ、ならば試してみようか

 洗い物を終えてから、パソコンに向かう姉ちゃんに声をかける。

ケンスケ

 姉ちゃん、パソコン貸してくれよ

 だめです

 一蹴されてしまった。

 いま気を逸らしたら一千万ぶっ飛びます!
 お父さんの部屋にあるノートパソコンでも使ってください!

ケンスケ

 親父のノートパソコン……?

 そう言われてみると……親父の部屋に古いノートパソコンがあった気がする。

ケンスケ

 うぅむ……親父のものを使うってのが、もうかなり嫌だが……仕方ないか

 というわけで、僕は二階にある親父の部屋に向かう。

 扉を開くと、舞い散る埃が目に映る。

ケンスケ

 確か……本棚のあたりに……

 ごそごそと本棚周辺を漁ると、エロ本が出てきた。

 小さな女の子がいっぱい映っている。

ケンスケ

 ……この気持ちを何にぶつければいいんだ……

 僕は見なかったことにして、発掘作業を続ける。

 有象無象を掘り進めた先に、目当てのノートパソコンを見つけた。

 ノートというよりは……バッグのような厚みのあるパソコンだ。

 年代物すぎる。

ケンスケ

 これまだ動くのか?

 とはいえ、僕はとりあえずそれを持ち出し、リビングへと戻る。

 姉ちゃんは相変わらずパソコンと睨めっこで、縫姫ちゃんは子供向けアニメを熱心に見つめていた。

 僕は空いているコンセントを探し、親父のノートパソコンを起動させる。

ケンスケ

 ……お、動いた

 見るからに古臭い起動画面が映る。

 とりあえずこのパソコンを粗大ごみ置き場に叩きこまなくても良いらしいことは確認できた。

 ……と、そこで予想外のアクシデントが発生した。

ケンスケ

 ……パスワード……か

 アカウントがロックされていた。

 使えねえ!

ケンスケ

 姉ちゃん、このノートパソコンのパスワード知らない?

 お姉ちゃんが知るわけないです

ケンスケ

 詰んだ……

 やはり粗大ごみ置き場にボッシュートか?

 縫姫ちゃんがパスワードを知るわけもないし……。

 あぁでも、美香ちゃんなら何とかしてくれるんじゃないですか?
 美香ちゃん、ハッキングとか出来るって言ってましたよ?

ケンスケ

 え? そうなの?
 こわ

 どんだけ知識つけてんだろう。

ケンスケ

 うぅむ……

 まだ夜の九時……。

 とりあえず、美香に電話をかけてみよう。

その6-1 親父のノートパソコン

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