それぞれがそれぞれの国にて〈1〉
それぞれがそれぞれの国にて〈1〉
我々の住む惑星ウグディアは、王子もご存知の通り、資源に恵まれた惑星です。その惑星の資源をめぐって、世界大戦が行われたのは?
67年前
はいそうですね、その世界大戦は非常に最悪な状況をもたらしましたが、同時に改めて人々が平和と言うものに関心を持った出来事でした。先人たちの努力によって、今の私たちの生活があるのです
ですから、王子にはもっと政治と言うものに真摯に取り組んでいただきたいのです。でしょ?
レンガ造りの古城の一室。王子とその直近である世話係は、木製の磨き上げられた、20人は周りに座れそうな大型テーブルを、たった二人で贅沢にスペースを使い、勉強をしていた。
正しく言うと勉強しているのは王子の方であって、世話役は王子の先生も兼ねている。
ねぇ、アロン?もう終わりでいいでしょ?あそびにいこーよー
駄目だ、ハルト
と同時に親友でもある。
ハルティリッシュ・リーブス・ユーグレア王子、齢17。アーロニス・シンディ、齢20。お互い、ハルトとアロンと呼んでいた。
毎日同じこと言い過ぎなんだよ、アロンは。覚えちゃってるかんねー
それが狙いだ。じゃ、続きだ。こほん、では王子、この世の平和の基準である同盟条例ですが……
あーもうハイハイ、我が惑星には大小様々135の国々が存在しますが、2〜5ほどの国々で小規模な同盟を作り、またその作り上げた同盟同士で大きい同盟を作り、そして大きい同盟をさらに大きい同盟で括って9つの同盟にし、最終纏めたものがエスティア惑星における平和同盟ですー。そんでー、この度同盟の再編成がありましてぇ、ウチの国はぁ、新しく同盟を結ぶ隣の隣の国との同盟関係の印にぃ、王子様とお姫様が婚約してますのでー、そのうち結婚しますー、でしょ?
はい、不真面目な解説ですがその通りですね
ハルトは机に突っ伏しながらアロンと話していた。やる気のなさをアロンに主張したいのだが、アロンはそんなことはお構いなしに続けた。
ねーアロンさ、あの姫様のこと好きぃ?
……はぁ……
アロンは小さな溜息をついた。
もういいその話題は。お前が好いいてようがなかろうが、同盟のための婚約だ。それは相手も同じだ
だってさぁ、あの姫様、ぜってぇ俺のこと嫌いよ?この前なんかさぁ、姫様がこけかけたから手を差し出したら、『ひっ!』って言われたよ?
その話はもう聞いた
それにさぁ、俺さ、姫様って悪い子じゃ無いと思うんだけど気が強すぎるって言うか……俺もっとほんわかしたタイプが良いんだけどー
それも聞いた
あのね、結婚だよ結婚!大事なことだよ!?俺は、この世で、いちっばーん好きな人と一生添い遂げたいの!
それも聞いたが、それ以上言う事はあるか?
アロンの視線に殺気を感じたため、ハルトは即座に「ごめん」と謝った。
……これは前にも言ったが……。お前の言いたい事は分かる。だがな、平和のためだ
誰かの犠牲の上に成り立つ平和ぁ?
それは公の場で絶対言うなよ……
……
ハルトの見上げた目線の先には、窓の向こう側で、この国のシンボルでもある瑠璃色の蝶が、同じような色の空に吸い込まれていった。
いいなぁ、ちょうちょは自由でさぁ……
〈つづく〉