ランディ

な、何だコイツ……

ランディ

な!?
何て数だよ……

 間一髪。新手の魔物の攻撃を躱したランディだったが、その魔物を見やるや、その美しい顔立ちを険しくさせた。

 ハルを叩き飛ばしたその魔物は、大きいものから小さいものまで数えると、10体近くいる。忽然と現れたかのようだったが、その現れた場所はタコ足の魔物を撃破した場所だった。

 チーギックが再度にやけた雰囲気で見下ろしているように見える。ランディは一瞬で状況を理解した。タコ足の魔物の死体に何かをしたのだ。

 今もなお、タコ足の部分が石化していき魔物へと変化している。

ランディ

!!

 ランディは最悪の状況に追い込まれた事を認識せざるを得なかった。



 ハルは今も壁際で仰向けになって倒れている。遠目に見ても息をしているが、血を吐くほどのダメージを受けとても戦闘どころではない。それに鷲型の魔物の火炎ブレスで数は減ったものの、雑魚も沢山いるし、タコ足から生まれる石の蛇はどんどん増えていく。四方から囲まれたランディは孤立無援で四面楚歌、絶体絶命の圧倒的窮地でしかない。

ランディ

あ~ん?
もしかして
勝った気でいんのか?
俺は諦めがわりーから
こんなとこで
くたばる気はねーぜ。

 にじり寄るように包囲を固める魔物達。チーギックはその包囲の外で、ナイフを片手でジャグリングしている。










 まだ可能性はある……。

 魔物相手に啖呵を切ったランディの勝ち目は、ジュピターが追い付いてくること。もしくはユフィ達もそうだ。今、チーギックがジワリと包囲を縮める間に、それはあり得ることだった。













 だが…………































 キンッ!
            カィンッ!!

      キィンッ!!

          ガッ!

  カ! カ! カ! カ! ィン!
           ザッ!
       ザシュッ!  

 聞こえてきたのは、ジュピターと魔物の激しい戦闘音。強敵三体を同時に相手し続けているのだろう。





 少し静かになったせいか、皮肉にもジュピターが救援に来る可能性を否定する音が聞こえてきたのだ。

ランディ

だよな、
やっぱ負けられねーよな。

 ランディの視線の先にはハルが立っていた。

ハル

ハァ、ハァ……
ング、ァ……
ハァ……ハァ……

 鬼義理を支えにして立つのが背一杯のハルだった。吐血の量は尋常ではなく、体中、裂傷・打撲傷でズタボロの状態だ。

ハル

ぜ……た、いに……
つ……、まえ、るっす……

 今迄に見せたことがない下段に鬼義理を構えるハル。いや、それより上に腕が上がらないのだろう。頭からの流血で片目は瞑っているが、その目の光からは戦う意志が漲っていた。

 悦に浸っていたチーギックは、いい気分を逆なでされたのか、一瞬場の雰囲気が反転するような気を放った後、即座にナイフを構えた。

ランディ

っ!!?
ハルキチー!

リュウ

ひゅ~♪
間一髪だったな。

 投げナイフは、突然現れたリュウが放った矢で弾かれた。

シェルナ

ど~ゆ~状況?
ハル大変じゃない。

シャイン

ズタボロじゃん……。
この治療薬使う?
良く効くわよ。
(後でガロン請求するけど)

フィンクス

取り敢えず片付けるか。

タラト

ハル、いじめ、たの
ツブス。

シャセツ

フン、くたばれ、雑魚共。

 ハル達が入って来た通路とは逆から、リュウ達が入ってきたのだ。



 魔物も、一斉にリュウ達に注意を向ける。







 ハルはリュウ達の姿を見た途端、前のめりになって倒れた。シェルナが近付き傷口を診る。力尽きたに違いないが、ハルの表情はどこか安心の色を浮かべていた。

 ~編章~     199、皮肉な音と諦めの悪さ

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