ここは確か…寮の階段だ

よかった…知ってる所に出られて

だが油断できねえぞ。
あの化け物はどこにいるかわからないからな

しかし、こんな所に繋がる通路になってたなんて…気づかなかったな。

確かに…
…ん？
何か物音が聞こえない？

物音…？

まずい、あの化け物が近づいていてる。
一旦この木の扉しめてやり過ごすぞ

ひぃひぃ

…段々近づいてくるな…

心なしか上の方から近づいてきてるような…

…

…

ふぇっ…

ま、まずい銀のくしゃみ…！！

ふぇっｋ！！？

ぎゃあああああ!!!

何やってんだお前ら！？

大丈夫か銀！？誰にやられたんだ！？

お前だよ！！！

シーッ

静かにしろ銀

…

…よし、段々音が遠のいてったぞ

よかったな…

何もよくねえよ!!!

いやぁ…あの化け物が音を感知しない性質が不幸中の幸いだったというかなんというか…

不幸中の不幸だ!!

すまん、銀。
化け物が物音に反応しないことを忘れてつい…

容赦ねえな紅夜

まだ殴るとかなら100歩譲ってよしとしても目潰しって！

うるせえ次はくしゃみじゃなくて息の根止めるぞ

すみませんでした!!!

こらこら、茶番は置いといて…
これからどうする？
化け物は今近くにはいないみたいだぞ

そうだな…
物音からしてまずあの化け物は階段で２階から１階に降りているだろうから今俺らと同じ階にいるな

寮の１階って何があったっけ？

まず階段の目の前にトイレ、その横に風呂場。
その他には管理人室と食堂がある

さすが、詳しいな

もしトイレの方に向かってたとすると穴が空いてたし外に行ってるかもしれないね

…となると探すのが困難になって仕留めるのも至難の技になるな

どうする？

何かいい案は…

そうだなぁ…

そういえば、ここの寮の２階って４つ部屋があったよな？

ああ、あったね。確かクローゼットに隠れた所だよね？

そうそう。
またあのクローゼットを利用するのはどうだろう？

利用？

兄さんに会う前に一度２階のクローゼットで銀とあの化け物から身を隠したことがあってな。
俺がまずクローゼットに身を潜め、誰かが囮となって俺のいる部屋にあの化け物を誘い込む。
そして化け物の背後から俺がこの刀で切り裂く、といった計画はどうだ？

なるほど。

ふむ。
そうだな。１階だと身を隠すところがないしな。
紅夜の言うように２階のクローゼットなら最適なんじゃないか？

まず囮になるやつが無事２階の部屋まであの化け物を連れてこられるかが問題だけどな

ああ、気は乗らないけど囮なら自分が…
紅夜のお兄さんは手を負傷してるしね

そんなこと気にすんな。全く使えない訳じゃないし銀が一人で囮になって何かあったら元も子もないしな。
俺は銀のサポートするぜ

二人とも大丈夫か？

自分ひとりだけじゃなく紅夜のお兄さんも着いてきてくれるなら心強いかな…

よし、決まりだな。紅夜、その作戦で行くぞ

わかった。
でも上手くいく保障はないからいざとなればあのトイレにあった穴から出て例の神社に向かって走るぞ

また走らなきゃいけないと思うとツラいな…

この作戦が上手くいけばもう走らなくてもいいと思って頑張ろうぜ

まぁ人生で最後の走ることになる可能性も無きにしも非ずだがな

それだけは勘弁だ…

はは。
そうならないためにも、今回のこの計画を成功させて元の世界に帰ろうぜ

じゃあ２階にまず行って準備しないとな

一旦自分たちも２階に行って紅夜がクローゼットに入るところを確認してから化け物を誘き寄せるよ

だな。
化け物は外か１階にいるのは確実だし、今のうちにさっさと２階に移動するか

ああ。

…よし、何もいない。
行くぞ

左奥の部屋に行こう

わかった

元俺がいた寮の部屋だ…

えっ、兄さんここでいたの？

そうだ。嫌な思い出しかないけどな

いろいろ大変な思いをされたんでしょうね…

ま、ここであったことは元の世界に帰ってからゆっくり話してやるよ。
さて…紅夜、クローゼット準備大丈夫そうか？

ん…なんとか。
真っ暗で何も見えないのがきついが、まあ物音とかでさすがに外の状況もある程度はわかるだろ

じゃあ後は任せたよ

こういう時に携帯とか使えたらいいんだどな。
じゃあ俺らは行ってくるよ

健闘を祈る

それじゃあ行こうか銀

はい

一体どこにいるんでしょうね

うーん…あくまでも俺の予想なんだが、もし外に行っていないとすると、トイレか風呂場、食堂の厨房辺りにいるんじゃないかと思う

え？どうして？

あの化け物ことキメラは水辺を好むんだ。

そうなんですか！？
あ、でも言われてみれば…
最初も水槽にいましたし、２度目もトイレで再開しましたし…
でもどうして？

あのキメラはいろんな生物の遺伝子を組み入れすぎているからな…きっと水中生物の遺伝子でも含まれてたんだろ。

水がないと死ぬってことですか？

どうだかね。
肺呼吸なのかエラ呼吸なのか…はたまた皮膚呼吸なのか。

もしかすると全て兼ね備えているという可能性もあるわけですね

そういうこった。

とりあえず…
今までの化け物の行動といい、紅夜のお兄さんの情報といい、水辺を好むようなので…
一応水辺に向かいましょうか

おう

あ、そういやほとんどのトイレの個室に鍵がかかってるんだった…

ほんとだ。
空いてるのは奥のあの外に通じる穴が空いている個室だけか…

うっ…トラウマが…

いいか、銀。
もしやつが出てきたとしても動揺するな。
ただ２階まで走るだけでいい。

は、はい

…

い、いない…

ここにはいないようだな。次を当たろう。

そうですね…

ここにもいない…か

確か隣の女風呂には浴槽に水を張っていませんでしたので、
残るは食堂の厨房くらいかと…

もし厨房にもいなけりゃ１階の部屋を全て探さないとな。
それでも見つからない場合は外に行ったということになる

外に出られたら出られたで探すのが余計に困難になりますね

ある意味この寮内にいてくれればいいんだがな…
つかこの浴槽汚いな。
どれくらい放置されてたんだろう…

苔や血の汚れが酷くて底が見えないですよね

…ん？血？
あれ…紅夜と最初にここを探索した時あったっけ…？

うわあああっ

わあああああ!!!

銀！！２階まで走るぞ！！

はい！！！

自分で計画立てといてなんだけど、大丈夫かな…

暗いしこれくらいなら大丈夫だろ…
しかし、本当にこの刀であの化け物をどうにかできるんだろうか

鞘とか見た目は古そうなのに…刃は立派なもんだな。
きちんと手入れされていたのか、それとも使われずにずつとあの神社に祀っていたものなのか…

ん…？声…？

誰だ？
誰かそこにいるのか…？

な、なんだったんだ…！？

空耳…？いや、影も見えたしな…
助けを求めてた…？
どういうことなんだ…

うううううう

頑張れ！！２階まであと少しだ！

ついた！２階だ！

紅夜のいる部屋に向かうぞ！

二人の声と走る足音が近づいてきた…化け物を連れてきた様子だな

よし着いた…ってうわっ！！！

えっ

ぎ、銀！！

紅夜！！！今だ！！

おう！！

何っ！？

ま、待て！！！

くそ、逃げられたか

ごめん自分が躓いたせいで…

いや、銀は悪くない。
どの道その窓ガラスをぶち破って逃げてただろうしな

あいつ…また帰ってくるんじゃないだろうな…

地面に血の跡が…
森の中に行ったみたいだね

このまままっすぐ向かったとすると…？

このまま森を抜けて先に行くと駅がある。

もしかしてその駅って自分たちがここに来るきっかけとなったあの…？

そうだ。斯く言う俺もその駅からこの世界に来た

じゃあもしあの化け物がいるとしたら森の中か駅…ということか

森の中だと気が遠くなる…

駅に向かったと信じて、俺らも行くか

おう。
ここでグダグダしてるうちに遠くに行かれたりすると困るしな

また走らないといけないのか…

…？

どうしたの紅夜？

声が…

声？何も聞こえないぞ？

あ…いや、なんでもない。
先を急ぐぞ

う、うん…？