ー精霊の村 セ・カンド前ー










村の入口へと進む勇者様。

村の門をくぐろうとしたその矢先…

ポチ

!!
シュワッ!!

勇者

お、ポチ!
どうした、そんなに急いで。


ポチさんは急に門の前の道端へと

飛び動きました。

ポチ

ゲフッ!


心配して様子を見に来る勇者様。

でもポチさんは満足そう。

勇者

ポチ、お腹でも壊したか?
大丈夫か?

…お、これは…
鋼鉄のよろいじゃないか!


ポチさんがどいた場所には

鋼鉄の鎧が篝火の光で照らされていました。

勇者

ありがとな、ポチ!
またくれるのか!

ポチ、なんか大きくなったよな。
よーしよしよし…。

このよろい、お前のうんちなのかな…?

ポチ

ゲフゲフ!




鋼鉄の鎧を手に入れて

ご満悦の勇者様御一行。

村の中へと消えていきます。


その姿を木陰から見守るライルさん。


ライル

勇者様に纏わりついているスライム、
何かと便利ですね…。

適当に狩ったモンスターと
渡したいアイテムを一緒において置くと
あのスライムが生み出したことになる…。

ライル

ひと通り渡しきれた事ですし、
とりあえず、一旦帰りましょう。

ライル

ハジメノの件も調べなくてはいけませんし…



ライルさんはその場をあとにしました。





精霊の村 セ・カンド


勇者

遅くなっちゃったな…

誰か起きているかな…

時間はもう真夜中。

外に人影はありません。

それどころか、家に灯る光もなければ

物音一つしません。


ただ石畳を歩く勇者様の足音が

響くのみです。

勇者

もともと人気の少ない村だと思っていたけど
ここまでとは…


時折、人の代わりに村に漂う村の精霊に

すれ違うこともあります。

ふよふよ
もふもふ

勇者

もふもふ。


しばらく道なりに村の中を進むと

村の中央付近に奉られている

祠に付きました。



祠の前の灯籠があたりを煌々と照らします。

灯籠には夜通し薪が

くべられているようです。

老人

こんな夜更けにお客さんとはのぉ…


と、祠の中から薪を持った

老人が現れました。

勇者

あ、はじめまして。
夜分遅く失礼します。

老人

なに、かまわん。
昼寝て夜起きる生活じゃ。

その代わり俗世間には疎くてのぅ…。

勇者

それにしても
夜とはいえ、とても静かですね。

老人

若いものは、みな村をでて
街へと行ってしまったと聞いている。

古いしきたりを護るというのは
性に合わんのじゃろう。

勇者

そうなんですね…。

勇者

ところで、魔王ツヴァイというのを
ご存じですか?

なにか些細事でも構いません。

老人

魔王ツヴァイ…
知らんのう…。

だが、この村に伝わる
真実の鏡に問いかければ
何かがわかるかもしれん。

勇者

真実の鏡…

老人

来るが良い。


と、おじいさんは勇者様を

祠の中へと招き入れました。


祠の中には勇者様の身の丈の

倍はあろう大きさの石碑が奉られています。

その下には手のひらに乗るほどの大きさの彫像が

7つ安置されています。


それぞれの像の足下には名前が書かれています。


オベロンの像
ミンスの像
モルガンの像
ナックラヴィーの像
ノームの像
ノッカーの像
レプラコーンの像


勇者

中はこうなってるのか…。

それで、真実の鏡というのは
どこにあるのですか?

老人

真実の鏡…
それはわしもわからん。
村の誰も見たことがないのじゃ。

勇者

…え?

老人

じゃが、この精霊の石碑の文字を
読んでみなされ。



石碑にはこう刻まれています。


* * *

9時に目覚めたモルガンは
3時のオロバスに会いに行く。

1時に産まれたナックラヴィーは
11時にはノッカーになる。

5時のレプラコーンは
7時にノームに化けた。

さぁ、12時にミンスを捧げよ。

みよ、時は始まり真実の鏡は語りだす。

* * *


勇者

真実の鏡は語りだす…。
謎解きか…。

老人

この村には12の台座が
村を丸く囲むように設置されておる。

それぞれには1から12の数字が
刻まれてもいる。

もしかしたらそれが関係あるかもしれんの。

勇者

お城でお義父さんにランプ時計というものを
見せてもらったことがある。

あれも1から12の数字がふられていて
時がわかるようになっていた。

勇者

ありがとうございます。

おじいさん、この7つ彫像を
ちょっとお借りします。

老人

うむ、かまわん。

勇者

えーっと、村を丸く囲むように
12の台座があるんだから…
12の正反対側に6、
3の正反対側に9があるんだよな…。

最初に9にモルガンの像、
3にオロバスの像を置くんだよな、きっと。



セ・カンドの村の西端へ向かうと

一番最初の台座を発券しました。

その台座には9の文字が書かれていました。


勇者

お、運がいい。
最初に9が見つかるとは…。


勇者様はそこにモルガンの像を設置すると

次に真東に進み村の東端の台座へと向かいました。


勇者

うん、やっぱり3の台座だ。


3の台座にオロバスの像を置いた勇者様。

そのまま村の外周にそって歩きます。

勇者

えっと…ここに2の台座があるから、
もう少し行くと…

あった、1の台座だ。


勇者様はナックラヴィーの像を1の台座に置くと

再び外周にそって歩きます。

11の台座に向かう途中、

12の台座にたどり着きました。

勇者

今ここでミンスの像を置けたら楽だけど
順番が関係あるかもしれないしな。

ポチ

ゲフ!



勇者様は石碑に書いてあった順番どおりに

彫像を置いていきます。


勇者

あった、11の台座だ。
ここにはノッカーだったな。

勇者

えーっと、次は
5時のレプラコーンだったな。

…5の台座だから、
来た方向から左に直角に曲がって
まっすぐに進めば…


勇者様は5の台座から

村の正反対を目指して

村を横断します。

途中、祠の前を通るとおじいさんは

うつらうつらとしています。


起こしてはかわいそうなので

勇者様は静かに脇をとおりぬけます。


勇者

よし、5の台座だ。
レプラコーンの像を置いて、と。


右回りに村の外周を回ります。

村の精霊の溜まり場でしょうか?

途中には沢山のもふもふが浮いています。

勇者

もふもふ…

……だよ

だ……よ

…め…よ


村の入口の脇に設置されていた

6の台座を通りすぎて、

勇者様は7の台座へとたどり着きました。

勇者

7にノームを置いて、と。

勇者

あとはこのミンスの像で最後だ。


勇者様は最後の像を握りしめて

村の外周を沿いを走ります。

ポチ

ぜぇぜぇ…!
ゲフッ!

勇者

ポチはムリしないで
ゆっくり来いよー。


8、9、10、11と

台座の脇を駆け抜けていく勇者様

12の台座へとたどり着きました。


勇者

はぁはぁ…
よーし、12の台座だ。

ふよふよ
もふもふ


心なしか村の精霊が

集まってきたような気がします。

勇者

この12の台座に
ミンスの像を設置すれば…


手を伸ばして台座に

ミンスの像を捧げる勇者様。


その時、にわかに村の精霊が

騒ぎ始めました


だめだよ

だめだよ

だめだよ



* * *


老人

………

老人

はて…?

真実の鏡の伝説なんてものが
この村にあったかのう?

なぜわしはあんな事を…

老人

ぬ……だれじゃ、
精霊の石碑にいたずら書きをしたのは!?



* * *



勇者様がミンスの像を設置した直後

にわかに空間が歪み出しました。

勇者

う…なんだこれ…

にげて

にげて

にげて

セ・カンドの村の精霊が一斉に

勇者様の体を包み込むようにまとわりつき

村の外へと連れ出します。



次の瞬間。
































勇者

…ん…


勇者様が気がつくと、

そこは村の門の前でした。



いえ、村の門という表現は

正しくありません。


それは平野に門だけが佇む光景。


勇者

これは…
またツヴァイの仕業なのか…?


そして、勇者様は

ふと気が付きます。

勇者

…ポチは?

…ポチ?…ポチ?


勇者様の問いかけに

応えるものはありませんでした。





つづく








【現在の装備】
レベル  :7
めいせい :205
ぶき   :新品の短剣
よろい  :鋼鉄のよろい
かぶと  :いつもの額当て
たて   :なし
どうぐ  :ファンガスの切り身(黄)
      野ばらのペンダント
      焼豚×2
      焼きとり×3
なかま  :
とくぎ  :ファイアブレス

第13話 精霊の村 セ・カンド

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